以下の文章は、北岡泰典のメルマガ「旧編 新・これが本物の NLP だ!」第 92 号 (2008.7.23 刊) からの抜粋引用です。
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私の本メルマガでは、「メルマガ『これが本物の NLP』は、 実際に北岡泰典のワークを受けずに理解可能か?」、「『Magic of NLP』再考」がカバーされています。
1. メルマガ『これが本物の NLP』は、 実際に北岡泰典のワークを受けずに理解可能か?
この質問へ答えは、決定的に NO ですね。
本メルマガについては、「北岡先生のワーク (資格コース) を受けた後読んだら、非常によく理解できましたが、その前に読んでもまったく何がなんだかわかりませんでした」という感想をよく聞きます。
この感想は、以下のことを意味していると思います。
1) 私の左脳的な知識は「すべて」右脳的落とし込みに裏打ちされていることが証明されている。
2) 私が実際に体で体験した NLP 演習を実際に体験せずして、私の「右脳的体験の左脳的分析」 (あくまでも、「左脳的分析の右脳的体験」ではない。そんなものの価値はゼロで、即ゴミ箱にいくべきである) を理解することは不可能である。
3) 私は、自分自身のありとあらゆるノウハウを本メルマガで公開しているが、読者による左脳的な「盗用」は可能であっても、「実質」的な秘密保持は決定的に保たれている (私のワークを受ける前に読んでも、まったく何がなんだかわからないので)。
ということで、現在のところ、私の NLP ワークは非常に限定されていますが、私のワークにまだ実際に触れていない方々に、今月 23 日、26 日、8 月 1 日東京での特別限定北岡泰典 NLP ワークショップ、 9月末の広島での無意識ワークショップ等の参加を強く推奨いたします。
また、上記にもつながってくるかもしれませんが、タイミングよく、私のコースの卒業生から「メタモデル」についての質問を受けたので、次項でそれについて「分析」したいと思います。
2. 『Magic of NLP』再考
私が、20 年以上前に NLP を英国で研究し始めたとき、2 冊の本を最良の NLP 入門書と見なしていましたが、そのうちの一冊は NLP 全般の入門書である『Magic of NLP』で、もう一冊はビジネス NLP の入門書である『Influencing with Integrity』です。両方とも、私が邦訳しています。(後者は、『ビジネスを成功させる魔法の心理学』 (ジェニー Z. ラボード著) ですが、何人もの人から、これは極めてすばらしい本だという感想をもらっています。)
『Magic of NLP』 (バイロン A. ルイス & フランク ピューセリック著) については、個人的には、「ザ ベスト」の NLP 入門書と考えていますが、何の NLP 知識ももたずに読むと若干難解である、という感想もときどき耳にします。
ということで、『Magic of NLP』は必読書として高く推奨できますが、その中でも、特に私が興味深いと思うページが 2 ページだけ (!) あります。そして、それらは、両方とも、左脳的分析ページではなく、図解イラスト ページであることは、上述したように、「私の左脳的な知識は『すべて』右脳的落とし込みに裏打ちされている」ことを示していているようで、非常に象徴的だと思います。
以下に、その 2 ページについて解説します。
A) メタモデルについて
『Magic of NLP』の中で私が特に興味深いと思うイラストは 同書の 106 ページにある「メタモデル図解 No.2」 です。以下に該当のイラストを引用掲載します (オリジナル図を編集しています)。
(このイラストは以下にアップロードされています。
http://www.creativity.co.uk/creativity/jp/magazine/images/metamodel.gif)
「メタモデル」とは、NLP で最初に開発された、いわゆる「傾聴」テクニックで、 クライアントまたはコミュニケーション相手の世界地図 (世界についてのモデル) について、情報収集、限界拡張、意味論的な誤形成の「正常化」を支援するツールです。
(ちなみに、『Magic of NLP』の共著者の一人、フランク ピューセリックは、NLP 共同創始者であるグリンダーとバンドラーが 1970 年代初めに「メタモデル」を開発したときの重要な共同研究者で、実際のところ、NLP 界の一部 (たとえば、オーストラリアの NLP 団体、 Inspiritive (www.inspiritive.com.au) 等) では、ピューセリックは、グリンダー、バンドラーとともに 3 人の NLP 創始者の一人として紹介されています。このことについて、グリンダー氏に質問したことがありますが、同氏は、特に否定しませんでした。)
たとえば、情報収集に関しては、クライアントが「私は動揺しています」と言った場合、「単純削除の離反」のメタモデル カテゴリに当てはまり、質問パターンとしては「具体的に何について動揺しているのですか?」と聞いて、削除された要素を回復しようとします。
また、限界拡張に関しては、クライアントが「男は感情を外に出してはいけない」と言った場合、「必然性の叙法助動詞の離反」のカテゴリが当てはまり、質問パターンとしては「もし男が感情を外に出したら、何が起こりますか?」と聞いて、 (誤形成の可能性が高い) 規則の元になっている経験を特定しようとします。
さらに、意味論的な誤形成の正常化に関しては、クライアントが「彼の喋り方が私を不愉快にさせる」と言った場合、「因果関係の離反」のカテゴリが当てはまり、質問パターンとしては「具体的にどのように彼の喋り方があなたを不愉快にさせるのですか?」と聞いて、その読心術の前提になっている、通常は誤形成の因果関係を明確化しようとします。
このように、メタモデルには、機械的/自動的に行うべき傾聴返答カテゴリが 12 種類程度あり、たとえば、セラピスト、コーチ、カウンセラー、コンサルタント、ファシリテータ、交渉人等がこれらの口頭パターン ツールを学習すると、絶大な傾聴効果が得られるようになっています。
しかしながら、これらは、パターンの数が比較的に多く、複雑なので、使いこなすことがなかなか難しくなっています。(そのためにこそ、ジョン グリンダー氏は、最近、NEW コード NLP の一環として、「非限定の名詞」と「非限定の動詞」の離反だけについて異議を申し立てる、メタモデルの簡易バージョンの「バーバル パッケージ」ツールを開発しています。)
ということで、通常、国内外の NLP トレーナーは、NLP 新参者に対してメタモデルを教えるとき、九九の計算、一休さんの頓知、またはお経の暗記のようなものとして教えていると思いますが、私には、個人的には、教える側のトレーナーと教わる側の生徒さんの両方にとって、限界を超えた拷問のようなもので、その精神的苦痛はなみなみならないものであると思えます。
その一方で、私自身は、20 余年前に『Magic of NLP』で、上記の「メタモデル図解 No.2」のイラストに出会ったとき、「メタモデルは奇跡的なことを達成している」ということがわかり、腑に落ちたので、非常に大きなモチベーションを感じながら、この「奇跡的」な傾聴ツールを習得するための努力を惜しみなく費やすことができました。
すなわち、 『Magic of NLP』の該当ページその他の解説によると、人間は、3 つの普遍的モデル構築原則をもっていて、それらを使って、「外界現実」から自分の「世界についてのモデル」を作り出します。これらの 3 つの原則は、「一般化」、「削除」、「歪曲」です。(この 3 つの普遍的モデル構築原則については、NLP の最初の書である『魔術の構造』で詳述されています。)
この「外界現実」が、「地図は土地ではない」 (一般意味論者のコージブスキーの格言) の「土地」に当たり、「世界についてのモデル」は「地図」に当たります。
(ちなみに、最近のグリンダー氏は、「外界現実」を「神秘」と見なしていて、我々はそのことについて何もいっさい語ることはできない、というイギリス経験論者的な立場を取っています。さらに、同氏は、外界からのインパルス (外界からのこの入力信号そのものは、同氏は肯定しているようです) が知覚器官を通る間ありとあらゆる変形 (この変形シリーズを同氏は「F1 (Filter 1)」と形容しています) を繰り返して、(地図、世界についてのモデルである) 我々の主観的経験 (すなわち、「FA (First Access)」) に到達している、そして、この F1 のプロセス内で何が起こっているかについての完全マッピングができれば、ノーベル賞が受賞できる、等と主張しています。)
この外界現実は、上のイラストでは、太線で囲んだ長方形のボックスそのものに対応しています。
人間は、この神秘である外界現実から自分自身の世界についてのモデルを作るわけですが、その際に使用される一般化、削除、歪曲の原則のために、 どうしてもそのモデルはいびつな形にならざるをえません。上のイラストで言えば、「深層構造 (DS (Deep Structure) )」が、その世界についてのモデルであり、右上の箇所に歪みがあることが表出されています。
(ここからがこのイラストの「革命性」だと思いますが、また、この指摘そのものは、NLP 共同創始者のグリンダーとバンドラーによるものでなく、『Magic of NLP』の著者によるものですが)、 この図解では、同じ人間が深層構造から「表層構造 (SS (Surface Structure) )」、すなわち、その人の「言語活動」を作り出すときも、その人が外界現実から深層構造を作り出すときに使った一般化、削除、歪曲の原則の割合 (あくまでもたとえとして言うと、「一般化 40%、削除 35%、歪曲 25%」等) と同じ割合で三原則を使うので、結果的に、深層構造と表層構造が相似形になると、想定されています。
さらに、この想定に基づくと、ある人が他の人の深層構造を「直接的」に影響して、その情報収集、限界拡張、意味論的な誤形成の「正常化」をすることは不可能ですが、幸いなことに、目に見えている部分であるその人の表層構造 (その人の言語活動) を変えることは比較的容易で、その人の言語活動パターンを変えるまさにその操作で表層構造の歪みを矯正することができ、そのことによって、相似形である深層構造も、(ある意味で、強制的に) 自動的に「連動」して、(同じ形の) 歪みが矯正されることが可能です (!)。
つまり、12 種類程度のメタモデルは、(通常直接変えることは不可能な) 制約されているクライアントの世界についてのモデルに基づいて構築されているその人自身の、外に現れている言語活動パターンを変えることを通じて、その人の内的な世界についてのモデルを豊かにし、正常化させるという「空恐ろしい」テクニック ツールなのです。
以上のことを、過去の私の NLP 資格コースで教えたとき、何度か、生徒さんから「目から鱗が落ちました」という感想をいただきました。
本メルマガは、今号で第 92 号ですが、以上の「ノウハウ」を本メルマガで公表したことがなかったことにふと気づいたので、このことを明示的に解説することにしました。
私のワークでは、以上のような、私のメルマガでも言及しないようなことも教えるので、「北岡先生のワーク (資格コース) を受けた後読んだら、非常によく理解できましたが、その前に読んでもまったく何がなんだかわかりませんでした」という感想をもらうとも思われます。
B) 4Te/4Ti (4 タップル) について
『Magic of NLP』の中でもう一つ私が興味深いと思うイラストは 同書の 153 ページにある「世界についてのモデルの制約」図解イラストです。以下に該当のイラストを引用掲載します。
(このイラストは以下にアップロードされています。
http://www.creativity.co.uk/creativity/jp/magazine/images/4tuple.gif)
上記のイラストは、「4 タップル」という NLP モデルを表出しています。
「4 タップル」については、本メルマガの第 10 号の FAQ で以下のように解説されています。
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Q32: 「4 タップル」とは何ですか?
A32: NLP 用語の「4 タップル (4T)」は、ある個人が特定の瞬間にもっている内的経験を表出 (モデル化) するもので、「4T = VAKO」の方程式が使われます。(なお、「タップル (Tuple)」とは「~個の元素からなる集合」という意味です。) この式は、人間は、どの特定の瞬間においても、視覚 (V)、聴覚 (A)、触覚 (すなわち、フィーリング) (K)、嗅覚 (O) から成り立っている一式の知覚経験をもっていることを意味します (簡略化のために O には味覚 (G) が含まれています)。なお、NLP 用語では、これらの感覚経路は特別に「表出体系」と呼ばれています。人間は特定の瞬間において必ずしも VAKO のすべての要素について意識的であるとはかぎらないことを指摘しておく価値はあります。
4T は、1) 外部生成の要素、2) 内部生成の要素のいずれかから構成されることが可能であることが指摘できます。(1 と 2 の組み合わせから構成される場合もありますが、このケースはここでは議論されません。) 前者の場合、4T は外部世界から入ってくる (入力) データだけから成り立っているので、「e」 (外部を示す「External」の略字) を付けて「4Te」 として表されます。後者の場合は、内部の記憶から来くるデータだけから成り立っているので、「i」 (内部を示す「Internal」の略字) を付けて、「4Ti」 として表されます。
4T の概念のおかげで、「考え」、「思考」といった捉えどころのない概念を「内的行動」と定義することができるようになるので、「行動/思考」の区別のかわりに「外的行動/内的行動」の非常に明快な区別を用いることができるようなることは特記に値します。
この 4 タップルとは、私たちが現実を再構築するための窓、要素です。つまり、ある任意の時点でのある個人の内的体験は常に、この VAKO の構成要素の組み合わせから成り立っているととらえることが可能です。
私は、だいぶ以前瞑想の修行をしていたとき、 (西洋人の) 瞑想の先生に「私は、意識が自分の中に向かう場合と外に向かう場合があることはわかりますが、このインターフェイスの区別はどのようになっているのですか?」と聞いたことがあります。この先生は、「それは自分自身で経験して確認するように」と答えました。今振り返って考えると、この先生は弟子にそのインターフェイスを論理的に口で説明することはできなかったのだと思いますが、上記の「4Te」と「4Ti」の区別により、このインターフェイスが見事に口で論理的に説明できるようになっていることが判明します。このことは、今まで伝統的にはすべて修行者の経験則だけに頼り、その師匠も口で説明できなかったような東洋的な方法論を、西洋心理学の NLP は左脳思考的に、論理的に説明できるようにした数々の例の一つになっています。
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上記の「世界についてのモデルの制約」図解イラストでは、まず、外界からの五感の刺激が「神経学的フィルター」を通って、4T が形成されることが示されています。
神経学的フィルターは、たとえば、コウモリには超音波は聞こえるが、人間には聞こえないとか、犬の嗅覚は人間よりも何万倍も鋭いといった違いを意味しています。
「社会的フィルター」とは、エスキモー人 (イヌイット人) は、雪を 20 通り区別することができる一方で、日本人の私は 3 通りくらい (雪、あられ、ひょう等) しか見分けられない事実を意味しています。同じ雪を見ても、エスキモー人と日本人は、「まったく異なる現実」を見ているということになります。また、19 世紀の米国では、二人の男性の間に対立があるとき、すぐに「決闘」が始まり、二人とも死んでしまうといったことがよく起こりましたが、そのようなことは現在はほぼ起こりませんが、このような社会的慣習も社会的フィルターの一例です。
社会的フィルターを通ってでてきた 4T は、いまだに 4Te で、かつ、お尻に「ラベリング」を意味する「D (デジタル)」の要素が付加されています。
「個人的フィルター」は、個々人がその人生で確立してきた「アンカーリング」の機能のことです。たとえば、ある音楽の曲を聴くと、その曲を一緒に聞いた、若い頃付き合っていた人のことを思わず思い出してしまう、といったことが一例です。このフィルターを通って出てきた 4T は「記憶ボックス」に運ばれます。
このイラストでは、 「個人的フィルター」から出てきた 4T は二層になっていますが、上層は 4Te で,下層は 4Ti です。4Ti の要素は、すべて記憶ボックスからチューブを通じて送られてきたものです。
実際にはこの 4T は一層で、e もしくは i のどちらか一つです。たとえば、ある人の顔を見たとたん、5 歳のとき虐待されたことを思い出し、気分が悪くなり、そのときいた病室の臭いを思い出した場合の 4T は、
Ve Ai Ki Oi
といった表記になります。
この図解イラストは、4T を概念的に理解するためのかっこうのツールとなります。
ちなみに、最重要な NLP ツールの一つであるカリブレーションを行うためには 4Te でいる必要があることは、自明の理です。
私の資格コースの生徒さんに関しては、私のプラクティショナー、マスター プラクティショナー コースを通じて一番衝撃的なモデルは 4Te/4Ti の区別です、という方々が数多くいます。 私自身も、この意見に同意できます。
ごく簡単なモデルが、必ずしも意味合いが浅いわけでなく、深遠であることもありえる一例になっています。