以下の文章は、北岡泰典のメルマガ「旧編 これが本物の NLP だ!」第 8 号 (2003.12.21 刊) からの抜粋引用です。
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今回は、NLP FAQ (頻繁に尋ねられる質問) にお答えしたいと思います。読者の方々の中には、すでに知っている内容であると思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そういう方々にとっても固有名詞等、興味深い情報も含まれているものと願っています。
Q1: このメルマガは誰をターゲットにしているのですか?
A1: このメルマガの主ターゲットは、「NLP ハードコア」と定義しています。すなわち、NLP のパワーをすでに実感していて、NLP を自分の職業等に取り込んでいるプロフェッショナルな方々 (NLP のプロを含みます) です。このため、このメルマガに見られる説明の大部分は左脳志向の傾向が非常に強いものになっています。NLP をワークショップ等で実際に経験したことのない方々には、必然的に、理解が難しいかもしれません。
Q2: NLP の略語が意味する「神経言語プログラミング」はどうしてこんなに難しい名称が付いたのでしょうか?
A2: しいて言えば、NLP の完全名称の「神経言語プログラミング」は、心的機能 (「神経」) と言語 (「言語」) の間の基本的関係と、その相互作用がどのよ うに私たちの体と行動に影響するか (「プログラミング」) を解明することが NLP の目的であることを意味している、ということになりますが、実際には、それほど大きな意味合いはないと考えていいと思います。この名称は、1980 年くらいから使われ始めたようです。欧米では、特に「プログラミング」という響きに抵抗感が強く、次の FAQ にもあるような「洗脳」のイメージに結び付いているので、NLP が普及するための大きな障害になっているとも考えられます。(そのわりには、これまでの普及度は極度に高いと思いますが。) 私自身の経験では、日本では、この名称に対しては、欧米ほどの抵抗感はないようにも思えます。これは、おそらく、略語が好きな日本人が NLP という略語を聞いても、自動的に完全名称を日本語で思い浮かべることはないことが一つの理由になっていると思われます。
Q3: NLP は、結局は洗脳技法であり、感性とか感情とかを無視する極度にドライな方法論だと思いますが、間違っているでしょうか?
A3: NLP は、「自分が知っていることをどのように知っているか?」を問いかける認識論的アプローチに基づいていて、感性とか感情がどのように生まれるのかを考察しますが、スキナー風の行動心理学のように意識、感性、感情の存在そのものも否定することはありません。
つまり、NLP の観点から言うと、たとえばある人の触覚的 (フィーリング) 経験が規則によって支配されているかもしれないという事実は、その人がまさにその経験をもっていないということは意味するわけではありません。それとは逆に、その人が自分の経験が規則によって支配されていて、それをコントロールすることができることを知っている場合は、その人は、もしそう望むなら、さらにいっそう強烈に触覚的な経験をもつこともできるようになります。
Q4: NLP 共同創始者と共同開発者の違いは何ですか?
A4: 「NLP 共同創始者」は、ジョン グリンダーとリチャード バンドラーの二人です。「NLP 共同開発者」は、最も広い定義では、「NLPer」 (「エヌエルピア」と発音し、意味は「NLP 専門家」です) 全員を意味する場合もありますが (実際に、1995 年に私がバンドラーから「NLP トレーナー」の資格を取得した際、認定コース修了者は全員「あなたは NLP 共同開発者です」と記したカードを NLP 協会からもらいました)、最も狭い狭義の意味では、NLP 創始当時に共同創始者のまわりにいて、かつ NLP の開発を助けた米人 NLP トレーナーのグループを指します。たとえば、実質的に NLP ナンバー スリーのロバート ディルツ、同じくナンバー フォーのジュディス ディロージャ、『Therapeutic Metaphor』の著者のデイヴィッド ゴードン、『NLP: The New Technology of Achievement』の著者のチャールズ フォークナー、『王子さまになったカエル』等を編集転記したスティーブ&コニー アンドレアス夫妻、エリクソン催眠の研究者であるスティーブ ギリガン、元バンドラー夫人のレスリー カメロン バンドラー等の名前を挙げることができます。さらに、少し若い世代として、NLP の枠を越えて、特に米国と英国のビジネスマンのグルのようになっている感のある、『アンリミティッド パワー』の著者の米人アンソニー ロビンスの名前もここで言及できるかもしれません。私自身は、このうちこれまでに、いわゆる「NLP 四天王」の 4 人と面識があり、正式トレーニングを受けてきています。
英国の最近の NLP 共同開発者としては、英国に NLP を初めて紹介した米国女性のアイリーン シーモア、グリンダーの英国でのワークのプロモーターだったジュリアン ラッセル、ワークショップ トレーナーのジュディス ローエ、最近バンドラーと NLP 認定コースを共同開講しているマイケル ブリーン、『NLP のすすめ』の著者のジョセフ オコナーとジョン シーモア、ITS 代表のイアン マックダーモット、一連の共同ワークショップを開講しているペニー トンプキンスとジェームズ ローリー、その他がいます。私は、ここに言及された英国の NLP 共同開発者全員と面識があるか、過去の NLP 四天王のトレーニングに一緒に参加した間柄ですが、一般的に言って、英国の NLP 共同開発者は「米国生まれの NLP」の英国での「紹介者」にとどまっているような印象が拭いきれません。この状況は、NLP が普及している英国以外の国々でも、おそらく同じだと思われます。
他に特記すべき、私が直接面識のある NLP 共同開発者としては、私がそのトレーニングを受けた、ビジネス向けワークショップ トレーナーの米人女性のララ ユーイン、NLP と教育に関する『メタケイション』の著者のジッド ジェイコブソン、NLP ユニバーシティのゲスト トレーナーであるスージー スミス、2000 年以来毎年夏に京都で開講されてきている日本人向け法人ワークショップで私が共同トレーナーとしてトレーニング サービスを提供している米人 NLP トレーナーのジョセフ リジオ (彼は、ジョゼフ キャンベルに基づいた自己啓発系のワークショップも開講しています)、1988 年当時私がその催眠と「イナー チャイルド (内なる子供)」を組み合わせたワークショップに参加して、そのユニークな催眠技法に驚いたニュージーランド人のデイヴィッド グローヴ、1988 年にグリンダーのトレーニングに一緒に参加して以来の私の友人で、現在は東京中野区で定期的に、NLP/合気道/整体/催眠を組み合わせた「精心道」ワークショップを開講している米人トレーナーのチャーリー バーデンホップ等がいます。
Q5: 「NLP 四天王」と言われている 4 人は、それぞれどういう人ですか?
A5: ジョン グリンダーは学者肌で (実際に変形生成文法の言語学者です)、物腰の柔らかい方で、NLP の理論的な開発に大いに貢献しました。1980 年代後半に、私がグリンダーとジュディス ディロージャのワークショップ (「個人的な天才のための必須条件」)、NLP 資格コースに参加したとき、グリンダーの「知的な」認識論的議論の「切れ」にはかなり驚きました。現在は、カルメン ボスティックという女性トレーナーとパートナーを組んで NLP ワークを続けています。私はグリンダーと今も交流があります。1939 年生まれの 64 歳です。私は、グリンダーを最高の NLP 理論家と見ています。
リチャード バンドラーは、NLP 創始時には数学者でした。ロックンロールのミュージシャンでもありました。グリンダーとは対照的に、いわば派手な「ショーマン」という印象があります。トレーニング時にも、歯に衣を着せない形でストレートに物を表現します。非常に直感的な天才と形容されることもあります。1995 年には、ドイツで開講された認定資格コース中、私はバンドラーと一連の個人的な会話をもちました。最近の彼のワークは、サブモダリティと催眠誘導に基づいています。1950 年生まれの 53 歳なので、25 歳で NLP を創始したことになります。私は、バンドラーを最高の NLP 実践家と見ています。
ロバート ディルツは、非常に腰の低い方で、根からの研究家という印象です。彼は、多くの重要な NLP 個人編集テクニックの考案者です。非常に多筆家ですが、その著書の内容はかなり左脳志向なので、これが、その著書の多くがまだ日本語に訳されていない理由であるのかもしれません。私は、ディルツを最高の NLP テクニック考案者と見ています。
ジュディス ディロージャは、文化人類学者、ダンサーです。そのワークは直感的で、「ソマティック (身体的)」な局面を非常に重要視するトレーナーです。1980 年代は、グリンダーとパートナーを組んでいましたが、現在はディルツとともに NLP ユニバーシティを運営しています。最高の NLP 直感者と言えます。
Q6: 現代心理学における NLP の位置付けを知りたいのですが。
A6: 西洋心理療法の一応すべての学派を過去に経験的に見てきた私の意見では、セラピーにおいても、一般心理学においても、20 世紀後半以降の学派として、NLP ほど体系だった、かつ、実際的な効果を発揮させる学派は存在しないと思います。私の知り合いのある NLP トレーナーに言わせると、NLP 以降、場合によっては NLP 以上に速い療法的効果を発揮できる、「メリディアン」 (経絡、いわゆるツボのことです) を活用する EFT (エモーショナル フリーダム テクニック) という学派があるということですが、純粋にいわゆる「理知的」あるいは「認知的」な学派としては、NLP の療法的効果がもっとも速いと思われます。セラピーにおいては、最近「家族の座」という学派が普及してきていますが、学問の体系度は NLP の方が深いと思われます。ビジネス面で現在普及してきているコーチング、メンタリングと比べても、NLP の方がより大きな学問体系になっていると思われます。
ちなみに、私は、個人的には、この 21 世紀の「情報グローバル コミュニケーション」の時代を成功裏に生きていくために、理想的には、いわばコンピュータの場合の OS のように機能する 3 種類の技能を基礎教養として身に付けておく必要があると考えています。これらは、「情報」を処理するために必要になるコンピュータの GUI (グラフィック ユーザー インターフェース) 操作、「グローバル」であるための語学力、特にインターネット言語である英語力、「コミュニケーション」技能を高めるための NLP です。私自身、これら 3 つの分野の能力を意識的に獲得してきていますが、これら以外に私がもっている専門エリアでの私のこれまでの学習習得度を飛躍的に向上させてきています。また、私の経験では、これら 3 つの「基礎教養」技能における学習習得/加速法の規則がまったく同じであることを個人的に発見しました。この「普遍的」学習法則は、本メルマガの第 5 号、『北岡式学習加速法』で詳述してあります。
Q7: なぜグレゴリー ベイトソンとミルトン H エリクソンが「NLP の父」と呼ばれるのですか?
A7: NLP の理論的背景としては、本メルマガ第 3 号で指摘したように、17~18 世紀のイギリス経験論に基づいたバーランド ラッセルの認識論を継承したグレゴリー ベイツン (国内では、Bateson はこれまで慣用的に「ベイトソン」と音訳されてきているようですが、私の 15 年以上に渡る欧米での実地の NLP 経験では、NLP トレーナーは例外なく皆「ベイツン」と発音していますので、私もあえて「ベイツン」と呼ぶことにしています)、さらには、「NLP の兄」と言ってもよいパロ アルト グループがいなければ、NLP は生まれていなかったでしょう。
その一方で、これらの理論を応用した技術/テクニックの観点から言えば、エリクソン式催眠を研究することなしには、NLP の最初の書、『魔法の構造、第一巻』は生まれていなかったでしょう。
これらの意味で、これら二人の偉人は、NLP 誕生のために不可欠の存在だったので、「NLP の父」と呼ばれています。ある意味では、ベイツンは NLP の左脳志向の理論面、エリクソンは右脳志向の直感的体験面を代表しているとも言えます。
Q8: バンドラーとグリンダーが裁判で争っていたというのは本当ですか?
A8: バンドラーとグリンダーは、私の理解では、1980 年初頭以降、お互い別の道を歩み始めましたが、約 10 年前頃からバンドラーが NLP は自分自身が創始したものであると主張して、グリンダーを含め数人以上の NLP トレーナーを裁判で訴え、損害賠償を求めていました。結局は、NLP はすでに 20 年以上に渡って公けになっている公開情報/技術であるので、一人の人間が現時点で独占所有することはできないという理由で、バンドラーは敗訴しました。2001 年発行のグリンダー著の『Whispering In The Wind』の最終ページには、お互い NLP 共同創始者として相互の貢献を認め合い、互いの努力を尊重し合うといった意味のグリンダーとバンドラー二人の署名入り和解書のファックス コピーが載っています。
Q9: NLP には商標登録 (「TM」または「R」マーク) されたテクニックがありますか?
A9: バンドラーがグリンダーを含め数人以上の NLP トレーナーを訴えた裁判で仮にバンドラーが勝訴していれば、NLP テクノロジーはバンドラーの知的所有物となり、世界中の人々は NLP を言及する際、「NLP TM」という風に商標を示す「TM」を必ず「NLP」の後に付ける必要があったかもしれませんが (事実、裁判を起こしていた当時、バンドラーは人々に「NLP TM」と「TM」を付けるように奨励していました)、彼は敗訴したので、現在、NLP は商標登録の対象になっていません。
ただ、NLP のテクニックの一部をそのテクニック考案者が商標登録しているケースはあります。たとえば、『タイム ライン セラピー』はタッド ジェームズによって商標登録 (Registered Trademark) されていて、『コア トランスフォーメーション』はタマラ アンドレアスによって商標登録されています。ただ、私の見るところ、これらのテクニックは NLP のごく一部を構成しているにしかすぎず、特に『コア トランスフォーメーション』は、ディルツの『心身論理レベルの整合』と非常に似ているという意味からも (この両者のどちらが先に考案されたかは私には不明です)、商標登録してまで保護されるべきものかどうかは議論が分かれるところだと思います。
Q10: NLP はどうして学界的に主流の学問になっていないのですか?
A10: NLP は、70 年代初期に、カリフォルニア大学サンタ クルーズ校 (UCSC) でクレスゲ カレッジの教授であったグレゴリー ベイツンの下にいたジョン グリンダーとリチャード バンドラーによって共同創始されたにもかかわらず、学会を組織することで学問的に自立する道を辿ってきていない事実は非常に興味深いものです。確かに、 当時は、西海岸のカウンター カルチャー全盛期で、NLP の共同創始者自身、意識的に学問の主流に入らす、代替の道を選んだように思えますが、私が見るところ、NLP は通常の科学の場合のように、まず初めに仮説を立てて、その後でその仮説の妥当性を確認する目的で実験するといういわゆる「科学的」な方法論的手順は取らず、その逆に、仮説をいっさい立てることなく、まず現実を注視、観察、実験した後、現実でうまく機能する方法論だけを発見、確立し、その後で初めて左脳志向の理論付けを行うという方法論的手順を取っているので、このことが、NLP が伝統的な意味での学問として成立しない、あるいは、成立しえない一番大きな理由になっていると思います。
個人的には、象牙の塔に篭ってしまう、「耳年増」の学者の理論よりも、生きた現実のレベルで行動の変化を達成してしまうプラグマティズム (実用主義) の権化である NLP モデルの方が、比較不可能なほど価値が高いと思いますが、私自身の過去のあるワークショップで、参加者から「もしどこかの大学で NLP の効果が統計的に証明された学術論文があれば、それをまず見せてください。(そういう権威的裏付けがあれば) そのとき初めて私たちは NLP を信じて受け入れます」という発言を受けて驚愕したことがあります。私にしてみたら、この参加者の方々は、「自分が現実に目で見ている実際起こっていること」 (NLP 演習での実際の経験) よりも「机上の空論」であるかもしれない統計の方を信じて、自分自身の五感による経験の妥当性の検証作業の努力を初めから放棄しているように写りました。
Q11: NLP の世界的な統括団体は存在しますか?
A11: NLP を統括する世界的な団体はありません。各国の国内規模では、興味深いことに、米国には大規模な団体は存在していなくて、英国とドイツの団体が大きいようですが、世界共通語の英語を使うという理由から英国の「英国 NLP 協会 (ANLP、The Association for NLP in Britain)」が一番権威があるように思われます。この団体には、遠く香港や南アフリカの海外会員も多くいます。会員の条件は NLP プラクティショナー以上です。私は過去 15 年間この協会の会員ですが、確か 3 年前の会員数は約 2,000 名だったので、現在は 3,000 名を越えているかもしれません。
ちなみに、NLP は、ラテン系、旧東欧国のヨーロッパ、さらにはロシアを含めてかなり普及していますが、なぜかポルトガルではいまだに NLP のトレーナー数は極めて小数のようです。同じポルトガル語を話すブラジルでは NLP が広く普及しているだけに、これは非常に興味深い事実だと思います。ちなみに、私が開講する NLP コースの一部をテイクケアしていただく予定になっているリタ ベロさんは英国で生まれ、育ったポルトガル人の NLP マスター プラクティショナーです。
Q12: NLP の認定資格には世界的に統一された規格制度が存在していますか?
A12: NLP 創始以来、NLP 認定資格は伝統的に「プラクティショナー」、「マスター プラクティショナー」、「トレーナー」の種類が存在し (場合によっては「マスター トレーナー」も存在します)、原則的にマスター プラクティショナー以上のトレーナーが自分自身の責任で資格認定を行ってきています。(合気道の二段の人が弟子に二段を与えることができないように、マスター プラクティショナーの資格はトレーナー以上の資格の持ち主でないと与えられないのは、論理的帰結です。) 世界的に一本化された認定規格制度は存在していません。たとえば、私のプラクショナー、マスター プラクティショナー認定書は 1988 年、1989 年当時のグリンダーの主催団体の「GDA (Grinder, DeLozier & Associates)」発行ですし、私の 1995 年のトレーナー認定書はバンドラー主催の「NLP 協会 (The Society of NLP)」発行で、2002 年のトレーナー認定書はディルツとディロージャ主催の「NLP University」発行です。
私の見るところ、統一された認定制度が存在していないので、認定書はどの団体によって発行されたか、よりもむしろ、その認定書に署名した NLP トレーナーがどれだけ NLP 業界の他のトレーナーに認められているか、といった要素の方がより重要になってくると思います。
ちなみに、よく知られた NLP 資格認定団体としては、米国では、バンドラーの NLP 協会、ディルツとディロージャの NLP ユニバーシティ、および狭義の NLP 共同開発者の多くが関与している NLP コンプレヘンシブがあります。(グリンダーは、個人の名前で資格認定をしているようです。) 英国では、ジュリアン ラッセルが主催していた PPD、イアン マックダーモットの ITS 等の資格認定団体があり、さらに、バンドラーがここ数年来、(私と 15 年来の知り合いである) マイケル ブリーンと世界的に有名な舞台催眠師のポール マッケナと共同で資格認定コースを開講してきています。
Q13: NLP のどの資格を取得すると NLP トレーナーとして自立できるのですか?
A13: もちろん、NLP トレーナーとして自立できるかどうかは資格以上に、その本人の資質、力量、経験によると思いますが、たとえば、プラクショナー資格だけを取得して、即 NLP を教え始めるということは、不可能ではないと思いますが、少し無理がありすぎると私は個人的に考えます。
私は、この点に関して本メルマガの第 6 号で以下のように書かせていただきました。
「少なくとも欧米の NLP 業界について言えば、NLP プラクティショナー資格認定コースは、上記の比喩で言う地下鉄の各駅の詳細 (NLP の各モデル) について、それぞれ対応した演習とともに個別に学習習得するためにあり、マスター プラクティショナー資格認定コースは、プラクティショナー コースで個別に習得した各駅 (各モデル) 間の有機的な関連性を学習体感して全体のネットワーク (全体像) に熟知するためにあり、トレーナーズ トレーニング資格認定コースは、全体のネットワークと個別の各駅 (各モデル) の両方のレベルについて、高度な熟知/習得度を達成するためにある、と見なすことができるかもしれません」
Q14: どうして NLP は 70年代にカリフォルニア サンタクルーズで生まれたのでしょうか?
A14: 私には、NLP が 70年代にカリフォルニア サンタクルーズで生まれたのは、必然であったと思われます。当時西海岸は、サンフランシスコで生まれたヒッピー文化の後を継いで、カウンターカルチャー、催眠/瞑想/ドラッグ等による変性意識の実験が最盛期を迎えていました。私が見るかぎり、サンフランシスコやサンタクルーズの地域に当時いわゆるわけのわからない学派が無数に存在していたと思いますが、統計的な確率の観点から見て、その無数の偽物じみた学派の中で「たまたま」一つか二つ本物の学派が生まれても何ら不思議はなかったと思いますが、まさしくその砂漠の中の一粒の砂のような本物の学派が NLP だったということになると思います。また、なぜ NLP が本物でありえたかの大きな理由として、その理論的背景に 20 世紀の偉人、ベイツンがいたことが挙げられると思います。
Q15: NLP の父の一人であるベイトソンの現代思想への影響はどのようなものがありますか?
A15: グレゴリー ベイツン (上述の理由から「ベイツン」という発音転記が使われています) のプロフィールについては、このメルマガの第 3 号に書きましたが、彼の、いわゆるニュー エージ シンカーに対する影響は絶大なものであるように思えます。
すなわち、「ニュー サイエンス」の代表的な科学者/思想家に、『タオ自然学』のフリッチョフ カプラ、『生命潮流』のライアル ワトソン、形態形成場のモデルを提唱した『生命のニューサイエンス』のルパート シェルドレイク、ホログラフィー理論を提唱した現代物理学者のデビッド ボーム、脳科学者のカール プリブラム、散逸構造論を提唱してノーベル賞を受賞したイリア プリゴージン、人工知能の研究者のフランシスコ ヴァレラ、組織学習の大家で『最強組織の法則』 (この原書の「The Fifth Discipline」は欧米ではベストセラーになった本ですが、国内では邦訳はほとんど売れなかったという情報をどこかで読んだことがあります) のピーター センゲ等がいますが、これらの思想家のほとんどがベイツンから直接的、間接的な影響を受けていると言っても過言ではないと思います。
Q16: NLP と催眠の関係を教えてください。
A16: NLP の父二人のうちの一人が世界で最も権威があるとされている催眠療法医のミルトン H エリクソンであったという明白な事実から見ても、NLP と催眠の間には非常に密接な関係があります。さらに、1975 年に出版された最初の NLP 書である『魔法の構造、第 1 巻』では、エリクソン、ゲシュタルト療法の創始者のフリッツ パールズ、家族療法の権威の一人のバージニア サティアの 3 人の天才の「療法の魔法使い」をモデル化した事実から、NLP は当初は心理療法の新しい代替学派として生まれたと見なすことも可能です。ただ、私の見るところ、1980 年頃から、さらに一般的な適用性のある「コミュニケーション心理学」の完全な方法論に変容していきました。
この NLP の変容は、別の観点から言うと、NLP 共同創始者は当初、エリクソンが得意とした「夢遊病者」的な深い催眠状態で達成可能な療法的効果をモデル化 (すなわち、学習可能な一式のツールとしてパッケージ化) しましたが、その後、必ずしも深い夢遊病者的催眠状態を使わなくても、それと同じ程度以上の療法的効果を日常的に発生する普通のごく軽い「トランス (変性意識状態)」を利用して達成できることを発見した過程を反映しているように私には思えます。NLP の個人編集テクニックは、まさしくこの軽いトランス状態を活用した演習です。
Q17: NLP と瞑想の関係を教えてください。
A17: NLP には、『個人編集テクニック』と呼ばれるツールが一定数用意されていますが、これらの演習テクニックの実践者が演習を通じて経験することの最重要な「副産物」として、実践者が今までまったく見落としていた、整体療法家のモーシェ フェルデンクライスのいう「捉え難い明示性 (The elusive obvious)」である、いろいろなことにいろいろなレベルで気づき始めるということが起こります。
この「気づき」は、通常、瞑想者が観察力を付けて瞑想を深めるにつれて獲得されるものですが、ある意味では、NLP では、その気づきが、瞑想の場合よりももっと体系的に、もっと速く起こり始めると言っても間違いではありません。
Q18: NLP と心理療法の関係を教えてください。
A18: 上記の A16 にもあるように、NLP は当初は心理療法の新しい代替学派として生まれた。私自身、約 20 年前に約 1,700 時間以上の心理療法セッションを受けましたが、幼児期以来悩んでいたトラウマを完全解消することはできませんでした。その後、トラウマ完全解消を可能にしてくれたのが NLP でした。この過程、および NLP と心理療法の決定的な違いは、本メルマガの第 4 号を参照してください。
Q19: NLP で極度のトラウマを解消することは可能ですか?
A19: 私自身の経験では、NLP による極度のトラウマの解消は可能です。この過程は、一定数の NLP 『個人編集テクニック』を持続的、反復的に実践していくことで達成されえます。この点に関しては、本メルマガの第 4 号でさらに詳細に述べています。
Q20: NLP モデリングの過程は一式の学習可能な手順として明示化されていますか?
A20: NLP モデリングの方法論の過程そのものは、NLP 文献で一式の学習可能な手順として明示化されてきていないと思います。ただ、含蓄的な意味では、『他の人のストラテジー引き出し』や各 NLP 個人編集テクニックの手順と過程自体がモデリングの方法論を使っていると言えなくもありません。
ちなみに、本メルマガの第 5 号の冒頭で、グリンダーが、NLP の創始以来 NLP の適用例しか存在していないことを憂えていたということを書きましたが、彼の最近の著作である『Whispering In The Wind』等では、グリンダーは、NLP 専門家が一度「初心」に戻って、再度モデリングの作業過程を一式の学習可能な手順として明示化する (すなわち、モデリング過程のモデリングする) ように奨励しているように思われます。
ただ、グリンダーとバンドラーが 30 年前に達成したことを、NLP 専門家はこれまで明示的にモデリングしてきていないので、仮にもしグリンダー (または他の NLP トレーナー) が「モデリング過程のモデリング」を明示化したとしても、残念ながら、今後そのモデリングのレベルを超えていく (「モデリング過程のモデリングをモデリングする」) 人々が出てくるとは考えにくい点もあります。
Q21: NLP は「メンタル合気道」と呼ばれているのですか?
A21: 少なくとも、1980 年代後半にグリンダーとディロージャが共同ワークをしていたとき、心理的なホーリスティック ワークである NLP を補完するための身体的ホーリスティック ワークとして、フェルデンクライス メソッドまたは合気道の「課外授業」が二人が開講したコースまたはワークショップで行われていました。(私の友人のチャーリー バーデンホップも、グリンダーとディロージャのコースの課外授業で合気道を教えた、と聞いています。) 特に (身体的な) 合気道と対比して、NLP は当時「メンタル合気道」と呼ばれていました。
Q22: NLP で英語力を飛躍的に伸ばすことは可能ですか?
A22: 私自身、学生の頃から語学が得意で、たとえば大学の学士論文をフランス語で書くほどの実力を付けていました。過去 20 年近い欧米生活の後、私は、フィジカル ハンディーキャップにもかかわらず、書く/話す/読む/聞くの総合的な英語力では、おそらく最高レベルと思われるような力を付けてきています (現在フランス語の方は大分鈍っていますが)。日本では、このように自分のことを自慢すると人から嫌われるので気を付けるように、とある人に言われましたが、しかし、この「自慢」は、私自身の能力の自慢のつもりでは毛頭なく、元々得意だった学習エリア (私の場合は語学等いくつかあります) を NLP を使ってどれだけさらなる学習加速化を達成してこれたかを読者の皆さんにお伝えしたかったためだけです。
ですので、この FAQ に対する答えは、「NLP で英語力を飛躍的に、しかも短時間で伸ばすことは可能です」です。
ちなみに、この、私自身の NLP による語学力の学習加速化と完璧化の過程を基に、これまで、コンピュータ ソフトを使った「北岡式英語力加速法 CD-ROM プロジェクト」を企画してきていて、すでに私自身のアイデアの特許申請も終わっていて、特許内容も公開されています。
プロジェクト遂行には資金面の要素もあるのですが、読者の方々でこのようなプロジェクト共同参加に興味がある方もいらっしゃるかもしれない、とも思っています。
Q23: 「NLP 新コーディング」と言われているものは何ですか?
A23: 私の知る範囲では、「NLP 新コーディング」という言葉は、1980 年代後半にジョン グリンダーとジュディス ディロージャが開講した一連の『個人的な天才のための必須条件』ワークショップで使われ始めたものです。
私自身、それ以前の NLP と新コーディング NLP の間には明確な差異はなく、お互いシームレスにつながっていると考えていますが、私自身の解釈では、「NLP 新コーディング」の最大の特徴は、(1) ゲシュタルト セラピーが伝統的に使っていた「スペース ソーティング」 (いわゆるロール プレーといってもよいもので、フロアにマーキングして、実際に身体を動かしていくつかのフロア上のスポットを移動して回ることです) の活用、および (2) そのスペース ソーティングに基づいた一連の「NLP 個人編集テクニック」の演習実践の多用、の 2 点だと理解しています。
グリンダーとのパートナーシップを解消した後、ディルツと NLP ユニバーシティを共同運営してきているディロージャは、NLP 新コーディングを継承してきています。
Q24: 「NLP 百科事典」というものがあると聞きましたが、これはどういうものですか?
A24: 1980 年に NLP 四天王 (グリンダー、バンドラー、ディルツ、ディロージャ) は『神経言語学プログラミング、第 1 巻』を発行し、その続巻が予定されていましたが、(グリンダーとバンドラーのパートナーシップが解消されたのが一番の大きな理由だと思われますが) その後の巻は出版されませんでした。ディルツとディロージャは、この未完プロジェクトを完遂するために、2000 年に『体系的 NLP と NLP 新コーディングの百科事典』全二巻を NLP ユニバーシティから出版しました。装丁の形式は『NLP 第1巻』と非常によく似ていますが、サイズは A4 の大きさで、各巻 800 ページ、計 1,600 ページの大書です。持ち運ぶこと自体大変です。
内容としては、主に、ディルツとディロージャの書下ろしと、四天王著のすでに出版済みの NLP の文献の再録から成り立っていますが、これを読めば、NLP のすべてではないにしても全体像が見えることは明らかです。
私自身、この NLP 百科事典を翻訳する意図はありますが、出版を引き受けれる出版社があるかどうかは微妙に思えます。
Q25: 日常生活で NLP テクニックを意識的に実践している人と自然に身に付いていてすでに無意識的にやっている人の区別はつきますか?
A25: これは、観察するこちらの側がどれだけ気づいていられるかに依存していると思います。NLP テクニックを意識的にやっていること自体が即人為的に見えたりすることはないと思われます。通常、人為的に見える行動自体、他の人は、それがその本人の自然な行動パターンであると見る傾向にあると思われるからです。
いずれにしても、ラポール形成時にも同じことが言えるのですが、あまりにも露骨に相手に人為的な印象を相手に与える特殊なケースを除いて、ある人が自然にある行為をしようが、不自然な行為をしようが、通常は、ほぼ常に相手の無意識のマインドにメッセージを送っていることになり、相手が、どのような行為であれ、意識的にどう思うかは、人間コミュニケーション上それほど重要な要素になるとは思われません。
Q26: いったいどこまで、またはどのように NLP を学べば、NLP の全体像が見えますか?
A26: この点については、本メルマガの第 6 号を参照してください。
Q27: NLP テクニックを学んでも、日常生活での適用のし方がわかりません。どうすればいいですか?
A27: この点については、本メルマガの第 7 号の最後の部分を参照してください。
作成 2023/10/5