以下の文章は、北岡泰典のメルマガ「旧編 新・これが本物の NLP だ!」第 79 号 (2007.12.5 刊) からの抜粋引用です。

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今回は、先々週末に開催された私のマスター プラクティショナー コース第二モジュールの報告、および、この週末に行われた「北岡式マインドワーク-無意識の世界にコンタクトする!」ワークショップの報告に関する情報を中心にお伝えします。


1. 北岡開催のマスター プラクティショナー コース第二モジュールの報告

先々週末に私の日本 NLP 学院マスター プラクティショナー コース第二モジュール「ミルトン モデル完全習得」が終了しました。

この内容は、過去 8 期 (今回を含めて東京 6 期、1 月から始まる最終期を除いて大阪 2 期) にわたって、同じものを教えてきていますが、私としては自信のある催眠ワークで、今回のコースでも、参加者からの反応は非常によかったと自負しています。

1 日目には、ミルトン モデルについて (左脳的に) 徹底説明がなされますが、この内容は、ジョン グリンダー & リチャード バンドラー著の『TranceFormation』 (1981 年刊) の最後の部分に載っている概要説明を、私自身が訳したものです。

実は、この本は、20 年くらい前に大陸書房という出版社が出版していた『瞑想誘導』として訳されていましたが、当時、私はこの翻訳を読み、おそらく原書の半分以上が割愛されていて、かつ、最後の部分の最重要な「ミルトン モデル」の概要説明も訳されていないことを知って驚愕して、グリンダー氏に「クレーム」を入れたことがあります。(このクレームは、いまだに処理されていません。)

その後大陸書房は倒産し、現在、『瞑想誘導』は、そのままの形で『催眠誘導―エリクソン・メソード決定版』 (アニマ2001社刊) として再出版されています。

私の聞くところ、翻訳の『催眠誘導』は、エリクソン催眠を説明するいい本だという評価もあるようですが、残念ながら、 原書を反映した本であるとは言えないと言わざるをえません。

ですので、私のマスター プラクティショナー コース参加者は、原文に最も近いミルトン モデルの説明に接せられるようになっています。

その後、「トランスに入ったときの徴候」演習がなされました。これは、通常トランスに入ったときに人が提示する、顔の無表情化といった徴候を読み取りながら、クライアント役の人がトランスに入ったことがわかったときは「メタモデル」を使ってトランスから覚まさせ、トランスから出たことがわかったときは「ミルトン モデル」を使ってトランスに入れる作業を、日常会話を続けながら行うというかなり高度なレベルの演習です。

モジュールの 2 日目は、ミルトン H エリクソンの催眠誘導の肉声を CD 録音で流し、小グループごとに、各自、前日左脳的に学んだミルトン モデルの各項目に従って、エリクソンの催眠誘導の徹底的分析を行うという演習を行います。

通常、コース参加者からは、「これだけ高度なミルトン モデルが随所で使われているのは驚きで、エリクソンが口頭で普通にしゃべるだけでクライアントを深い催眠に入れられるのもさもありなんだと思います」といった感想をもらいます。

その後、コース参加者は、各自、クライアント役の人に対して、今分析したばかりのエリクソンの催眠誘導のスクリプトを「日本語の訳」で読んで、はたしてその人が催眠状態に入るかどうかの実験をする演習がなされます。

今までの私の経験では、ほぼ例外なく、日本語の訳を使ってでも、これらのミルトン モデルは、英語でしゃべられたときと同じくらい効果的であることが証明されてきています。

実は、この二日間のミルトン モデル関連の演習パッケージは、私はどの NLP トレーナーから学んだこともなく、すべて私が開発したプログラムです。

さらに、コース終了後、ある参加者から「このモジュールで学んだ催眠テクニックこそ占い師や詐欺師が使っているものではないでしょうか?」といった質問を受けましたが、このことで、本モジュールの講義中に、「最近、石井祐之さんという人が日本に紹介してきている『コールド リーディング』とミルトン モデルは等価である」という事実を参加者に伝えることを忘れていたことを思い出しました。

このことについては、私は本メルマガの第 72 号に以下のように書きました。

「今年 [2007 年] の NLP コーチング トレーニング コースの「オーソリゼーション プログラム」の後半 3 日間の際に、[…] グリンダー氏がミルトン モデルについて語っているとき、私は、NLP コーチング トレーニング コース参加者の全員が必ずしもこのモデルに慣れ親しんでいるのではないだろうということに気づき、また、その方々の参照機構となるであろう「コールド リーディング」とこのモデルはほぼ同じ人間コミュニケーションの領域をカバーしているのではないかと思い、この点について同氏の意見を求めてみました。

(なお、オンライン百科事典『ウィキペディア』では、『コールド リーディング』は以下のように定義されています。

『コールド・リーディング(Cold reading)とは話術の一つ。外観を観察したり何気ない会話を交わしたりするだけで相手のことを言い当て、相手に『わたしはあなたよりもあなたのことをよく知っている』と信じさせる話術である。『コールド』とは『事前の準備なしで』、『リーディング』とは『相手の心を読む』という意味である。マジシャン、詐欺師、占い師、霊能者が用いる『裏のコミュニケーション技術』として知られているが、その技術自体はセールスマンによる営業、警察官などの尋問、催眠療法家によるセラピー、筆跡鑑定、恋愛などに幅広く応用できるものであり、必ずしも悪の技術とは言えない。』)

グリンダー氏の意見では、私の理解と同様、ミルントン モデルとコールドリーディングはほぼ相互に重なりあう定義をもつ用語でした。同氏は、ミルトン モデルの適用例の文脈で、『占い師等は、確率が 50/50 の占い内容をまずクライアントに提示して、周辺視野を継続的に使いながら、常にクライアントの反応をカリブレートして、その反応に応じて、占い内容を逐次修正し、徐々に狭めていく』という旨の発言をされていましたが、このことはコールド リーディング手法そのものです。」

なお、以下に示す、先週末の私の「北岡式マインドワーク-無意識の世界にコンタクトする!」ワークショップが「成功裏」に開催された結果をもって、現在、私の上記の「ミルトン モデル」ワークに基づいた「ミルトン モデル/エリクソン式催眠」ワークショップを開講する企画を、現在考えています。


2. 「 北岡式マインドワーク-無意識の世界にコンタクトする!」開催される

先週末、12 月 1 日、2 日に、私のワークショップ「マインドワーク 意識という黄金の糸~意識の覚醒をめざす/北岡式マインドワーク-無意識の世界にコンタクトする!」が新宿区の、新宿御苑が見渡せる会場で開講されました。

参加者は二十余名で、私自身は、非常に高度な無意識ワークができて、成功したと自負しています。

特に、参加者には、ボディーワーク系の代替医療関係者も多く、私がこれまで習得してきた「コンテント フリー」の NLP 方法論をこの方々の専門分野に落とし込んだ「左脳的説明」と「右脳的演習」が満足できる形で紹介できたのではないかと、思っています。

NLP をあまり知らない参加者もいましたが、NLP は左脳的な説明に終始した学問ではなく、それとは真逆に、左脳的である意識的マインドを (極論を恐れずに言えば) 「完全無視」し、その意識的マインドよりもおそらく何万倍も大きな、自分の中に常にいる「無意識的マインド」にサレンダー (自己放棄) する学問であることを知って (特にニューコード NLP にこのことが当てはまります)、自分の常識が覆って、驚愕した人もいたのではないかと思われます。(この意味での NLP では、意識 (あるいは、場合によっては、それを見ている「メタ」の観察者) は、単なる、複数の無意識的パーツ (「副人格」とも規定できます) を、オーケストラの指揮者のように、全体的に統合する役割しかもっていない、と定義される場合もあります。)

このことが非常に顕著に現れている例が一つあります。

以前、私は、少人数の「国内トップの NLP トレーナー」と言れている方々に、私の NLP 関連のコンテンツを教えさせていただくという機会がありましたが、その際、私のバージョンの「6 ステップ リフレーミング」演習を行ったとき、私がこの方々に「無意識がもっている問題行動の『高次の意図』も、それが考え出す 3 つの『新しい行動選択肢』も、そのコンテンツについて、意識は何も知らなくてもいいし、逆に意識的に知らない方が、変化はいろいろなエリアに普遍的に波及していきます」と指示したところ、異口同音に「それはありえない」という顔をされていました。

このことにより、私は、国内で知られている NLP は、「右脳的な体験だけを重視」する傾向がある一方で、「左脳的なコントロールを右脳的な無意識に明け渡す用意がない」形で教えられているのではないか、と直感した次第でした。

私は、真の NLP とは、この真逆の方向性をもった方法論である、と主張します。

すなわち、自分の無意識が行っていることを左脳的に説明できればできるほど、右脳 (無意識) の機能が論理的に理解でき、かつ予測できるようになるので、ますます (精密機械のように正確に動く無意識を司る) 右脳に行動のコントロールを任せる用意ができる、ということです。

私自身は、このようにして、自分の右脳と左脳のコーディネション領域を広げることで、5 歳のときに陥ってそれから抜け出せなかった蟻地獄から脱出することにやっと成功したわけですが、「右脳的な体験だけを重視する傾向がある一方で、左脳的なコントロールを右脳的な無意識に明け渡す用意がない」状態では、非常に小さなボックスにいる自分を外に出させることは、非常に困難になるのではないかと考えます。

まさにこのような目的を念頭に、この二日間のワークショップを開講させていただいたわけですが、「右脳的な体験をどんどん左脳的に説明する傾向がある一方で、(意識を、無意識的パーツを統合するオーケストラの指揮者のように機能させつつ) 左脳的なコントロールを右脳的な無意識に明け渡す」ワークとはいったいどういうものであるか、の一端を参加者は経験できたのでは、と思っています。

このワークショップでは、私がこれまで学院等で披露したことのない演習もいくつか学ばれました。特に、ワークショップの最後の演習は、私がスティーブ ギリガンから学んだ「トランスロジック」演習をリアレンジしたものでした。

これは、クライアント役の人をトランスに入れた後、「あなたは悲しいです。そしてあなたはうれしいです。あなたは、同時に悲しいこともうれしいことも楽しめます」というふうに誘導することで、「~かもしくは~」の二元論でしか機能できない左脳的な意識下では考えられない「同時に~であり、~でもある」という状態をトランス下で生成させて、無意識に、ある任意の問題は、実は同時に問題でもあり、問題でもないことを経験的に納得させる演習です。

演習後の参加者のフィードバックによれば、大きな変容が経験されたようでもありました。

このように、私の無意識的 (= 催眠) ワークの効果が本ワークショップの参加者に評価されたようでしたので、現在、その延長線上に位置するものとして、また、無意識的ワークの根幹になるものとして、「ミルトン モデル/エリクソン式催眠」ワークショップを開講する企画を、考えています。

この「ミルトン モデル」は、対になる「メタモデル」とセットで学んだ方が効果は大なので、1 日目にメタモデルを学び、後二日間でミルトンモデルを完全習得する 3 日間ワークショップになる予定です。

開催時期は来年の初めとなる予定です。詳細は、追って、本メルマガの紙上で告知することにします。

作成 2023/12/15