以下の文章は、北岡泰典のメルマガ「旧編 新・これが本物の NLP だ!」第 72 号 (2007.5.21 刊) からの抜粋引用です。
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先月末から今月中旬まで NLP 共同創始者のジョン グリンダー氏とパートナーのカルメン ボスティック女史が、日本 NLP 学院主催の「NLP トレーナーズ トレーニング コース」と「NLP コーチング トレーニング コース」を開催する目的で来日されていました。
今回は、同氏の来日情報を中心にお伝えします。
1. ジョン グリンダー氏のトレーニング内容について
NLP トレーナーズ トレーニング コースは 2 年がかりのコースで、無事 18 名の NLP トレーナーが輩出されました。同コースも NLP コーチング トレーニング コースも、非常に高レベルのトレーニングが提供されましたが、今年の NLP コーチング トレーニング コースの参加者の一人が非常に興味深いコース感想をご自身のブログ サイトに公開されていますので、本メルマガで引用紹介させていただきたいと思いました。
この感想は、私が 19 年前の 1988 年に英国のロンドン市と米国カリフォルニア州サンタクルーズで、それぞれ「個人的天才になるための必要条件」というタイトルのワークショップと同氏認定 NLP プラクティショナー コース (当時のグリンダー氏のこれらのワークは、今回の通訳を入れた同氏の日本での各コース内容の、少なくとも三倍は内容が濃いものだったという印象をもっています) を受けたときの「非常に『やばい』ものを見てしまった」という私の感想をうまく代弁しているかと思います。
以下がその感想です。引用元は菊池和郎氏の「楽しみながら♪ズバ抜ける!」サイト (http://coach.jugem.cc/) です。
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今日でグリンダー博士から直接教わるNLPコーチングは修了。
まず感じたことは、”他のコーチ仲間とも(先輩とも)いっしょに受けたかった”ということです。
もちろん今回の参加者の皆さんもそれぞれ素晴らしい方が揃っていらっしゃるのですが、この英知を受け取るのが、日本で30人ちょっとというのはあまりにもったいない・・・。
数年前の来日講演会があまり評価が高くなかったこともあって、グリンダー博士のセミナーはパスという方が何人もいらっしゃるのですが、今回のNLPコーチングは本当に素晴らしかった。
ここ数年間、寝ても覚めてもコーチングの日々を過ごしてきて、海外を含めマスターレベルのコーチングを見聞きしてきましたが・・グリンダー博士”圧倒的”でした。とにかく自由自在。愛とユーモアに溢れ、自然に深いレベルの変容を促します。それもプラクティショナーレベルの極めてシンプルなスキルで。
あらためてNLPコーチングの巨大な可能性を感じましたし、わたしが思い描いている理想のNLPコーチングに関して確信が深まりました。
また、以前も書きましたが、参加者の質問への対応力も尋常ではありません。
質問を的確にパラフレーズして明確にしつつ、(質問者個人を越えて)広い状況にあてはまるように変換。その間に周辺視野で他の参加者の興味の程度を計り、それまでの学びのバックトラック(振返り)とこれからの学びの未来ペーシングを含めて、どのレベルの参加でも学びがあるように、そして一つの正解を覚えさせるのではなく、選択肢と柔軟性を増すような思考パターンを伝えていきます(その多彩さは圧巻)。その間のキャリブレーションも半端じゃない。斜め後ろに座っている人の細かい反応もとらえながら、メタファーにしたり、論理的に話したり、自在にアプローチを変えていました。垣間見えるバックグラウンドの知識・教養の豊かさも参加者の納得度を高めます。かつユーモアたっぷり。
今回、敢えて基本的な質問ばかりをしたのですが、1の期待に5~10倍の応えをくださいます。それもどの本にも載っていない珠玉の応えを。
・・・すごいです。
さすが、生きているNLP。
通訳が付いてますから(英語圏で行われる)通常のセミナー半分の速度と情報量な訳ですよね。すごすぎる・・・。
NLPをお伝えするってことは生半可の学びではできないと常々思ってきましたが、また痛感しました。
そして、あらためて決意。
そこそこ本を読んだり、良質で先端のセミナーを受け続けたり、コーチングセッションの経験を積んできたつもりでしたが、まだまだぬるい。
最高レベルのNLPトレーナー・NLPコーチを目指してシフトチェンジ。
探求と発見のアクセル、楽しみながら♪踏み込みます。
素晴らしい学びの機会に感謝。
北岡泰典先生ありがとうございました。
日本NLP学院の皆様ありがとうございました。
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2. コンテンツ モデルのプロセス モデルへの変換公式
本メルマガでは、ずっと、NLP 共同創始者のジョン グリンダー氏は、あるモデルが NLP として認められるためには、そのモデルが 1) 有用性があり、かつ、2) プロセス モデルであること、という二つの条件を満たしている必要がある、と主張されている、という指摘をしてきています。
このことについては、同氏は以下のように述べています (この引用は、本メルマガ第 37 号からなされています)。
「2 年間の本 [トレーナーズ トレーニング コースの] トレーニングを成功裏に修了したトレーナーは、プロセス パターンであるかぎり、NLP 分野のどのパターンを教えることもできます。内容 [すなわち、コンテンツ] モデルについては、1) プロセス パターンに置き換えるか、 2) プロセスと内容の違いを生徒に教える目的で使われるか、3) 無視するかすることができます。 たとえば、ディルツの心身論理レベルは、内容を押し付けるモデルです。私が認定したトレーナーは、内容モデルとしてフレーミングしながら教えるか、生徒に内容モデルとして認識できるかどうか判定するよう求めながら教えるか (生徒がそう認識しないようであれば、トレーナーは最後にフレーミングする必要があります)、まったく教えないでいることができます。NLP に (合法的に) コード化されているプロセス パターンは、すべて、私が認定したトレーナーは教えることができます。実際のところ、私には、バンドラーが開発したプロセス パターンで、我々の初期の共同ワークとは独立した形で開発されたものを見つけるのは困難に思えます。」
グリンダー氏のトレーナーズ トレーニング コースは今月中旬に終了しましたが、同コースを修了したトレーナーは、(日本 NLP 学院のトレーナーとしては) プロセス モデルだけを教えるようになっています。
この「コンテンツ モデル対プロセス モデル」については、その変換手順について、最近グリンダー氏からメッセージが私の元に届いていますので、以下に引用させていただきます。
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コンテンツ モデルのプロセス モデルへの変換手順
1. 任意のコンテンツ モデルを検討します。
2. コンテンツ モデルの考案者に「モデルの意図は何か?」、「これは何を達成しようとしているのか?」という質問をします。モデル考案者に直接アクセスできない場合は、その人の知覚ポジションに入って同じ質問を自問します。
3. 上記手順 2 の代替手段として、該当のコンテンツ モデルを、その適用について充分経験できるまで複数回自分で行ってみることができます。この後、第三ポジションの知覚ポジションに踏み入って、「このパターンをこの一式のケースの適応することで、自分は実際には何を達成しているか」という質問を自分に対してしてみます。
4. 「このコンテンツ モデルの背後の意図は何か?」の質問に対する答えが得られたら、このコンテンツ モデルに非常に似ている一方で、手順 2 または 3 で発見した同じ肯定的意図を満たし、プロセスだけを使用するようなプロセス パターンを考案します。
5. 当初のコンテンツ モデルに対して、「同一構造マッピング テクニック」を適用してみることが有益な場合もあります。言い換えれば、当初のコンテンツ モデルの手順順序の各手順を新しく考案したプロセス パターンのプロセスの手順に置き換えることができます。 ここでも、この作業を行っているときに、コンテンツ モデルの各手順に関して、その手順の背後にある意図は何であるか質問してみることが有益な場合もあります。同一構造マッピング原則とともに、この質問はかなり役に立つでしょう。
6. 当初のコンテンツ モデルを一定のプロセス パターンに置き換え終えたら、多様な状況でプロセス パターンをテストして、その効果性を確かめてください。
7. 考案したプロセス パターンを当初のコンテンツ モデルの考案者に送って、自分自身で該当のプロセス パターンをテストするように招待してください。この招待状の中では、当初のワークの考案者の貢献を認めた上で、自分は当初のコンテンツ モデルは「内容の操作」をしていると見なしているので、当初のコンテンツ モデルに近い形のプロセス パターンの相対的な効果性についてコンテンツ モデルの考案者の意見を伺いたい、という「オープニング フレーム」を含ませることを忘れないでください。
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3. コールド リーディングと EMDR
ところで、今年の NLP コーチング トレーニング コースの「オーソリゼーション プログラム」の後半 3 日間の際に、私は、グリンダー氏に以下の二点について意見を求めました。
1) ミルトン モデルと「コールド リーディング」の類似性について
グリンダー氏がミルトン モデルについて語っているとき、私は、NLP コーチング トレーニング コース参加者の全員が必ずしもこのモデルに慣れ親しんでいるのではないだろうということに気づき、また、その方々の参照機構となるであろう「コールド リーディング」とこのモデルはほぼ同じ人間コミュニケーションの領域をカバーしているのではないかと思い、この点について同氏の意見を求めてみました。
(なお、オンライン百科事典『ウィキペディア』では、「コールド リーディング」は以下のように定義されています。
「コールド・リーディング(Cold reading)とは話術の一つ。外観を観察したり何気ない会話を交わしたりするだけで相手のことを言い当て、相手に『わたしはあなたよりもあなたのことをよく知っている』と信じさせる話術である。『コールド』とは『事前の準備なしで』、『リーディング』とは『相手の心を読む』という意味である。マジシャン、詐欺師、占い師、霊能者が用いる『裏のコミュニケーション技術』として知られているが、その技術自体はセールスマンによる営業、警察官などの尋問、催眠療法家によるセラピー、筆跡鑑定、恋愛などに幅広く応用できるものであり、必ずしも悪の技術とは言えない。」)
グリンダー氏の意見では、私の理解と同様、ミルントン モデルとコールド リーディングはほぼ相互に重なりあう定義をもつ用語でした。同氏は、ミルトン モデルの適用例の文脈で、「占い師等は、確率が 50/50 の占い内容をまずクライアントに提示して、周辺視野を継続的に使いながら、常にクライアントの反応をカリブレートして、その反応に応じて、占い内容を逐次修正し、徐々に狭めていく」という旨の発言をされていましたが、このことはコールド リーディング手法そのものです。
2) EMDR (Eye Movement Desensitization and Reprocessing、眼球運動による脱感作および再処理法) について
さらに、グリンダー氏が、クライアントのトラウマ キュアの一例として眼球動作パターンの使用を示唆したので、その関連情報として、(私の理解では、1995 年の阪神大震災時に PTSD (心的外傷後ストレス障害) 治療の一環として国内に広まった) EMDR についての同氏の意見を求めてみました。
同氏の回答では、EMDR の創始者のシャピロ女史は、かつてグリンダー氏の元で働いていた経緯があり、EMDR は、同氏自身が開発し、彼女に教えたもので、それを同女史が広めている、ということでした。
グリンダー氏によれば、同氏が開発したテクニックを他の人が教えることは気にはしないが、そのテクニックが自由に世間に広く広まらない形に制限されることについては、まったく評価しない、ということでした。
この件に関しては、国内では EMDR は、このテクニックの特別資格の与えられた医者しか使ってはいけないようになっている、というコース参加者からの指摘に対しては、グリンダーさんは反対の立場でした。
さらに、別のコース参加者からの「精神疾患を患っている人に対して NLP を使ってもいいですか?」という質問に対しては、同氏の答えは、「精神疾患を患っている人に対して NLP を使うときに留意すべきことは、これらの人々といかにラポールを形成するかであって、いったん深いラポールが形成されたら、普通の人々とまったく同じように NLP を使うことができ、同じような効果もある」というものでした。
私自身、このことは、欧米のように着実に発展してきていない国内のセラピーの実践家が「野放し」に精神病患者に対して NLP を施してもよいということを即意味するものではない、と考えています。ただ、一方では、このグリンダー氏の回答は、NLP 創始以前に同氏とバンドラー氏がサンタクルーズのモーテル街の道路に「精神科医、セラピストに長期間かかりつけになっていて、どうしても症状が治っていない人大歓迎します!」という大看板を掲げて、非常に難しい精神病のケースを多数扱った二人の NLP 共同創始者の姿勢と技能の高さを示していると思いますし、同時に、国内の医学界の「偏狭さ」も示唆していると思います。
作成 2023/12/8