以下の文章は、北岡泰典のメルマガ「旧編 新・これが本物の NLP だ!」第 56 号 (2006.8.2 刊) からの抜粋引用です。
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今回も、徒然に筆をとります。
1. 東京第六期プラクティショナー コース & 大阪第四期プラクティショナー コース
現在、日本 NLP 学院では、3 ヶ 月の変則の東京第六期プラクティショナー コース & 大阪第四期プラクティショナー コースが開講されています。
東京のプラクティショナー コースは大阪に先行して、先週末の時点ですでにモジュール 5 までが終わっています。先週末に開講されたモジュール 5 は学院の専属トレーナーであるアラスタ プレンティスさんが担当されました。「二重、三重記述」の観点から、いろいろな人の講義スタイルを学べるので、参加者にとっていい機会だったと考えています。
大阪では、先々週末に私の第四期プラクティショナー コースの第 3 モジュールが開講されましたが、「サブモダリティ」、「メタ ミラー」、「三段階分離」、「心身論理レベル」を始めとする、かなり重厚な個人編集テクニック演習が多数実践されました。
本メルマガの前号でも示唆したように、「モジュール 1 と 2 で NLP の (どちらかというと左脳的知識としての) 基礎をみっちり教え、モジュール 3 以降で私が NLP の真髄であると考えている個人編集テクニック」が集中的に教えられました。参加者の側のこれらの演習の効果に関する「満足度」もかなり高いと思いました。
この中で、「サブモダリティ」テクニックについては、私は、本メルマガの第 9 号で以下のように書かせていただきました。
「私の見るところ、『アンカーリング』、『TOTE』と同じくらい、あるいはそれ以上に最重要な NLP モデルは『サブモダリティ』です。また、仮に真の意味で NLP に固有なものがあるとしたら、それは、NLP 共同創始者の一人であるリチャード バンドラーによって発明されたこのサブモダリティ テクニックであると、私は考えています。NLP で『発見』されたかまたはモデル化された他のものはすべて、チョムスキーの変形生成文法、コージブスキーの一般意味論、ベイツン式認識論、エリクソン式催眠、フリッツ パールズのゲシュタルト療法方法論といった NLP 以前の学派によってなされた現代の発見として、または古代インドの哲学/心理学の一部として、すでに人類が考えついたものとして存在していたとも言えますが、サブモダリティのようなものだけはこれまで過去に存在していなかったように思われます。ちなみに、私の、1995 年夏ドイツ ミュンヘンでの [トレーナーズ トレーニング コース開講時の] バンドラーとの個人的な会話から、彼の、真の意味で画期的な意味をもつサブモダリティのモデルは、ホログラフィーの人間の脳の機能のし方への応用に関する彼自身の長年の研究に基づいていることが明らかになりました。」
私は、このテクニックは、これほど重要な NLP の発見であると捉えていますが、大阪コースに参加していたあるプロビジョナル トレーナーがこのテクニックについてプロビジョナル トレーナーのメーリング リストで非常に興味深い感想を述べられていたので、ここに部分引用させていただきます。
「ちょうど1年前に、第三モジュールを受け、『サブモダリティを自分自身で変えることができる。 それどころか、今まで思い続けていたトラウマが、単にそのときに選んだ状況でフリーズしていただけに過ぎない』と気づいて、すごい衝撃と、NLPの効果の大きさを感じました。」
2. 「1 = ∞ – (∞ – 1)」
私は、私なりに (= 「北岡ワールド」的に)、非常にユニークな (数学の公式等を使った) 「認識論的発見」をいくつかしています。(これらの発見については、今後の私の自著で公表していくつもりです。)
その発見の一つは「1 = ∞ – (∞ – 1)」という公式と NLP の「4T」のモデルを組み合わせたもので、これは以下のように表されます。
この北岡式公式の意味は、人間は、一瞬一瞬において潜在的に「無限 (正確にはほぼ無限)」の数の内的状態をもつことができる一方で、一つの「制約された内的世界」を持ち続けるためには、否定的に「無限 (正確にはほぼ無限) マイナス 1」の数の「可能性」としての内的世界を排除し続けている必要がある」というものです。
この公式は、「ミルトン H エリクソン全集」の編者のアーネスト L ロシの著、『The Psychobiology of Mind-Body Healing』の中で、ある学者が「一人の人間における可能な精神状態の数は、2 の 100 兆乗で、この数字は、知られている宇宙に存在する原子の総数以上である」と示唆していることと関連していますし、また、本メルマガの第 11 号の次の私のコメントとも関連性があります。
「グリンダーとバンドラーは、...悪循環に陥っていて、常にパニック状態に なってしまう人々を見て、その人たちは、外的環境の条件がどのようなものであれ、常に一定の『パニック』という外的及び内的行動を、いついかなるときにおいても首尾一貫して発揮できるという意味において、どの球場のマウンドに立っても常にコンスタントな成績を上げられるプロの天才的な投手のケースと同じように、そのようなパニック患者は一種の『天才』ではないかと見始めました。 (この発想の転換は、NLP では『リフレーミング』と呼ばれています。) その上で、グリンダーとバンドラーは、そのような患者が、それまで不適切な内的体験にアクセスするために使っていたまったく同じプロセスを使って、今度は本人の行動の選択肢がさらに広がるような、今までとは異なる、さらに適切な内的体験にアクセスすることが可能になるように支援して、パニック症状を克服することを可能にしました。すなわち、同じプロセスを使って、悪循環を『良循環』に変えることが可能になったのです。」
この公式は、東京第六期と大阪第四期プラクティショナー コースのそれぞれの第 3 モジュールで私が言及しましたが、東京の参加者からは「この公式の意味合いは深いので、考え続けて二日間くらい眠れなかった」といった (ポジティブな) フィードバックをいただきましたが、大阪では、二、三名の方々から「否定的反応」をいただきました。
一つの否定的反応は、このような「おどろおどろしい」無限といった概念を持ち遊んで、権威付けに弱いマインドを利用しようしている (これは、該当の方の発言そのものではなく、私自身の解釈を含んだ言質です)、というものでした。
私のこのコメントに対するメタコメント (コースで述べずに今述べていますが) は、「45 年間以上学際的な変性意識の研究をしてきている人間の口からは必然的に『尋常でない』考え方が発せられるでしょう」というものです。私は、この該当の発言者の方を評価していますし、この方にも、私のこのメタコメントを理解していただけるだろう、と思っています。
むしろ、この発言者ともう一人のコース参加者が同様に問題視されたのは、私の「無限」の概念の「誤った」使い方でした。 すなわち、「確立」した数学界の考え方から言えば、無限マイナス 1 は無限なので上記の公式は成り立たない、という「批判」をいただきました。
私は、今まで数学を徹底的に学んだわけではなく、単に「1 = X – (X -1)」の「絶対的に真」である公式の「X」の部分に「無限」の記号を入れただけなので、私の公式の妥当性が崩れるわけがない、という「素人的考え」と、バートランド ラッセルの「論理階梯の理論」等に基づいた「無限集合」 (この集合体には大小があることが数学的にも認められていると、私は理解しています) の概念に基づいて、この公式を導き出しているだけですが、もちろん、今後、私のさらなる認識論、「数学原理」等の分野に関する研究の中で、このお二人の「批判」が正しいものであるかどうかの徹底的検証をしていきたいと思っています。この紙面をお借りして、このお二人の「建設的なご批判」に感謝させていただきます。
3. 北岡泰典公式ワークショップ シリーズ
本メルマガで告知してきたように、「北岡泰典公式ワークショップ シリーズ」は、大阪で 7月 21 日に開講されたワークショップ「レクチャー 1.6 『マインドでマインドを超えられるか』」をもちまして終了しました。これにより、北岡泰典公式ワークショップ事務局も 7 月末で解散しました。
今後は、大阪を中心に北岡の『精神世界と NLP の架け橋を探る』をテーマにしたワークショップを再開したと考えていますが、この際、「瞑想を教えられる先生」との共同ワークを提供していきたいと思っています。
ちなみに、この最終回のワークショップ「レクチャー 1.6 『マインドでマインドを超えられるか』」で、何人かの参加者から繰り返して「小文字の mind が大文字の Mind を超えるということの意味を教えてください」という質問を受けたのですが、私としましては、的確な回答をその場で示せなかったと思いますので、この紙面で改めて説明してみたいと思います。(なお、この説明は、東京での公式ワークショップの同じレクチャーでは行ったと、記憶しています。)
すなわち、私は、たとえば、ロバート ディルツの心身論理レベルとフラクタルのモデルを組み合わせて説明するのが好きですが、この場合、以下のフラクタルの図式は、たとえば、最下位レベルが「アイデンティティ」で、最高位レベルが「環境」であると説明しています。(つまり、通常の三角形の「心身論理レベル」図とは上下が逆転しています。)
この場合、ディルツも (さらにはこの心身論理レベルと完全マッピングが可能な古代インドの概念の「五つの鞘」を説明する際のトランスパーソナル心理学者の) ケン ウィルバーも、上位 (上のフラクタル図では下位) の要素は下位 (上のフラクタル図では上位) の要素を含み、かつ超越していて、上位の要素が変化すれば必ず下位の要素が変化する一方で、下位の要素が変化しても必ずしも上位の要素が変化するとはかぎらない、という立場を取っています。
つまり、「マインドでマインドを超えられるか」の観点から言うと、大文字の Mind が変化して初めて小文字の mind が変化するのであって、その逆はありえない、ということが、この立場に含蓄されています。
にもかかわらず、最近の私のジョン グリンダー氏との個人的コミュニケーションの中で、同氏は「私は、今まで信念 (上位の要素) が変わって行動 (下位の要素) が変わった人のケースを見たことはない。行動が変わって信念が変わったケースに出会ったことがあるだけです」という、非常に興味深いコメントをされていました。このことは、いわば、Mind が mind を変えるのを見たことはなく、mind が Mind を変えるのを見たことがあるだけだ、と言うのと等価です。
このグリンダー氏の立場を追加説明するために、私は私自身の NLP コースで、2001 年出版のグリンダー & ボスティック著の『Whispering In The Wind』に紹介されている非常に興味深いケースをコース参加者に紹介しています。
このケースは、後数ヶ月の命と宣告された末期癌の患者のスーザンという女性をグリンダーがクライアントして受け入れた際に起こりました。
スーザンは「私がこの癌に打ち勝つためには、『私の全世界が上下逆になる』必要があります」という表現を繰り返していることにグリンダーは気づきました。
グリンダーは、英国人の友人で彼に飛行法を教えた飛行操縦士のデイビッド ガスター (私も、この若くして亡くなった NLP とフェルデンクライス メソッドのトレーナーと 1980 年代に面識があり、彼からトレーニングも受けました) と「共謀」して、ガスターとスーザンがある空港で会い、彼の操縦する飛行機に彼女が乗り込むようにアレンジしました。この後、同書では「読者は、次に起こったことが想像できるでしょう」と書かれていますが、私は、曲芸飛行もできたガスターが、曲芸飛行をして、スーザンに、実際に彼女に「全世界が上下逆になる」ことを経験させたと、理解しています。
同書のこのセクションは「聞くところによると、スーザン自身、その後『自然発生的症状改善』を経験したということです」という一文で終わっています。
このような「NLP 的癌治療」の方法は、日本では「ショッキング」でしょうが、欧米では、特に母親が癌にかかったディルツ等によって、かなりの程度まで研究されてきています。
このケースでは、明らかに下位レベルの「全世界が上下逆になる」という「行動」上の経験が、「この癌に打ち勝つためには、『私の全世界が上下逆になる』必要があります」という言質に関連しているスーザンの高位レベルの「信念」を変えてしまった、非常に典型的な例となっています。
このような「下位レベルの変化」が「高位レベルの変化」を引き起こせるということが、「どうのように小文字の mind が大文字の Mind を越えられるのか?」に関して、私が意味していたことの一部でした。
ちなみに、私の見解は、 「上位の要素が変化して下位の要素が変化することも、下位の要素が変化して上位の要素が変化することもある」というものです。ただし、「下位の要素が変化して上位の要素が変化する」ケースは、「コンテント フリー」である NLP のような方法論が生まれた後に可能になったのであって、それ以前には不可能だった、という付帯条件を私は付けています。
作成 2023/11/22