以下の文章は、北岡泰典のメルマガ「旧編 新・これが本物の NLP だ!」第 53 号 (2006.5.11 刊) からの抜粋引用です。
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今回は、来日中のジョン グリンダー氏の活動概要、同氏のメッセージ、新 NLP コース開講情報、北岡泰典公式ワークショップ シリーズの告知等がなされます。
1. ジョン グリンダー氏再来日される
NLP 共同創始者のジョン グリンダー氏が現在、4 月末から来日されています。
同氏にとっては、昨年に続き二度目の来日で、トレーニング パートナーのカルメン ボスティック サン クレア女史とともに日本 NLP 学院主催の「NLP コーチング認定コース」および「NLP トレーナーズ トレーニング コース」を開講する目的で来日されています。
「NLP コーチング認定コース」のグリンダー氏担当セクションは、4 月 28 ~ 30 日と 5 月 12 ~ 14 日の計 6 日間開講されますが、現在、この最初の 3 日間が終わっている段階です。参加者は 30 名でした。
この最初の 3 日間の印象としては、グリンダー氏は、今まで日本にはなかった「左脳的、論理的 NLP」を展開されましたが、参加者にとっては、非常に新鮮で、驚きだったと思います。毎日朝はグリンダー氏が講義を担当し、午後はボスティック女史が担当しました。
カバーされたエリアとしては、「状態変更」、「ラポール」、「カリブレーション」、「フレキシビリティ」、「(自発的シグナルによる) クライアントの無意識の活用」、「バーバル パッケージ」、「(クライアントの無意識とのコミュニケーションのための) 比喩の活用」等がありました。
一点興味深かったことは、共同トレーナーのボスティック女史は、当初日本の「会場で靴を脱ぐ」という習慣に合わせることに問題をもっていたので (彼女自身足に少し問題があり、また、ハイヒールをはくことで自分のプリゼンテーションを大きく見せてきていたということです)、初日 (室内用の) ハイヒールをはいて登場されましたが、セッションの途中で突然、ハイヒールを脱いで、「私は今まで、ハイヒールをはかないとプリゼンできませんでしたが、このような新しい状況では、そのような自分の習慣を中断する柔軟性も必要とされています」と言って、自ら「模範」を見せられたことでした。
ボスティック女史の講義のレベルに驚かれた方も多々いらっしゃったと思います。
5 月 12 ~ 14 日には、最後の 3 日間が開講されます。
「NLP トレーナーズ トレーニング コース」は、今年前半の 6 日間、来年のゴールデン ウィークに後半の 6 日間が開講されますが、前半の 6 日間は今月 2 ~ 7 日に開講されました。参加者は 20 名でした。
この トレーナーズ トレーニング コースでも、グリンダー氏の「左脳的展開」に驚かれた方が多かったと思います。ただ、その反面、基礎的な NLP ツールは練習を積み重ねて「条件反射的反応」として行動できていなければならない、というスタンスをおもちのようで、たとえば、二日目の朝は、バーバル パッケージ等の本当にごく簡単な質問/答えの繰り返しを何度も何度も参加者に「強要」されていました。この強要度については、参加者からも「こんなことはすでにわかっているのに、どうしてこんな簡単なことをさせるのか」という思いもあったようにも思いますが、私には、「右脳的に皮膚感覚に落とし込まれていない左脳的知識には何の実用的価値もない」というグリンダー氏の態度 (この態度には私も 100% 同意します) が如実に表れていたと思います。同氏は、コース中に、「基本的なツールが反射的に使えるようになったら、私ももっと高度な左脳的話もいっぱいできる」と示唆されていました。
最初の 2 日間は、(文化的な誤解もあったと思いますが)、「木製のインディアン人形」のようなあまり顔に反応を示さない日本人の参加者のフィードバックにお二人は非常に戸惑い、また、基本的ツールを実際に使いこなせていないのではないかというお二人自身なりの理解もあいまって、お二人はコースのクオリティに懸念を覚え始めていましたが、三日目に (通常のパターンを逆転させて) 朝ボスティックさんが講義に来られ、「教えられているパターンは何か?」、「トレーナーとしてのあなたは何を学べるか?」、「参加者としてのあなたは何を経験するか?」といった、第三、第二、第一ポジション変更を厳密に行うように参加者に求めて、それまでの二日間の「混乱」をクリアした後、三日目からは、参加者とトレーナーの間のコミュニケーションは劇的に改善されたようでした。
この混乱は、主に、下記のグリンダー氏のメッセージにもあるように、「最も重要なコミュニケーションの要素は、明示的に表現された部分ではなくむしろ含蓄された部分にある」という日本人の特徴に基づいていたようで、私とグリンダー氏の個人的会話の中で同氏は「私は、日本に単に NLP トレーナーを作りに来たのだが、ひょっとしたら 3000 年の日本の歴史を変えてしまうことに貢献しているのかもしれない」とも言っておられました。
この混乱が解消された後は、グリンダー氏もボスティック氏も、参加者のコース中の「変容」に真摯に驚かれていたようで、同氏は「(来年の後半の 6 日間のトレーニングまで) 今後一年間、皆さんがこのコースで学ばれたツールを練習し続けていくことを絶対的条件として、他のどのトレーナーにも劣らない能力をもった卓越したプリゼンターとして NLP 業界さらにはそれ以上の活動の場で、今後人々に肯定的な影響を与え続けていかれることは間違いありません」という趣旨の発言をされていました。
トレーナーズ トレーニング コースは (コーチング認定コース同様)、成功裏に終わったと形容できると思います。
なお、 トレーナーズ トレーニング コースの 6 日間の概要プログラムは、参加者のお一人が作成してくれています。以下の URL を参照してみてください。
http://blog.livedoor.jp/infiorata2424/archives/cat_50013302.html
2.ジョン グリンダー氏のメッセージ
来日中のグリンダー氏に日本の方々へのメッセージの執筆をリクエストしましたが、以下のようなメッセージをいただきました。
グリンダー氏のメッセージ
日本市場で最高の NLP コーチと NLP トレーナーを輩出するために日本でコースを開講するという経験は、カルメンにとっても私にとっても報いのある経験でした。私が、ここで、25 人程度のグループ参加者は、グループに参加して、デモ演習被験者として前に出たり、質問やコメントを発言したり、また一般的に、このような状況で公の活動に参加したりすることに関して、少なくともコースの初めにおいて、躊躇することがあった、ということを指摘したとしても、読者の皆さんにとっては、別に新しいことではないと思います。
さらに、日本文化は、「高文脈」文化として分類されてきています。「高文脈文化」とは、文化人類学者の用語で、二人の日本人間のコミュニケーションにおいて、明示的に表現されない部分がそのコミュニケーションの重要な部分であるという観察的事実を意味しています。このパターンの一つの結果は、旧コードとニューコードの両方の NLP の多様なツールの中で、(統語の操作を通じて) やり取りの言語的内容を正確に限定するという目的をもったツール (私たちは、ここで、メタモデル、プレシジョン モデル (明確モデル)、バーバル パッケージを念頭に置いていますが) は、今年開講された二つのコースの日本人参加者には、自然な形では習得、活用されない、ということでした。これは、これらのツールの適用は、伝統的な日本文化内では、習慣的パターニングに逆らうことになるからです。
このことは、挑戦であると同時に、機会でもあります。私たちにとっての挑戦は、これらのツールを適用した上でその結果を発見してもよいと感じ、さらに、このタイプの具体的な言語コミュニケーションに起こる経験の欠如を理由とした馴染めないという感情を克服できるような学習の状況を作り出すことです。機会は、盲目の人々の住む谷にたまたま迷い込んだ片目の見えない男のストーリーが象徴的に示唆するものです。
一番最後の比喩は、次の具体的なポイントを日本的に説明することにつながります。すなわち、高文脈の文化では、上記の一式のパターンの訓練を適切に受けた人は、日本文化の伝統的慣習の (同化された) 制約のために他の人々が達成することのできないことがらを達成できるという計りしれない競争力を身につけることになります。
警告
通常の文化慣習と衝突するようなこれらの高度に優位性のあるパターン (バーバル パッケージの限定ツール) を成功裏に適用するためには、これらのパターンを適用している日本人の方は、以下のセットの技能を身につけていて、効果的に使用する能力をもっている必要があります。
1) ラポール: クライアントの無意識と自分自身の無意識の間の肯定的つながりを維持する能力です。これは、ラポール実践者の「意図のフレーミング」、(ミラーリング等の) 身体的ラポールの継続的活用、優先表出体系の無意識的マッチングを組み合わせることによって、最も簡単に達成することができます。
2) カリブレーション: 非言語的シグナルを「測定」することで、相手の日本人の行動を通じてその人に誘発されている状態が具体的に何かを特定して、現在起こっていることがその人にとって受けいれられるものであるかどうか (強い、継続的なラポールが存在するかどうか) を知ることができる能力です。
3) 柔軟性: 非言語的シグナルを通じて、現在の言語的コミュニケーションがクライアントに受け入れられるものでないと判明したとき、他の形態の言語的コミュニケーションに移行することのできる能力です。
私たちは、特にラポールを築き、維持する能力に関して、規律のある練習を続けることで、他の NLP パターン一式を習得した上で、これらの限定ツールにより、現在 NLP コーチと NLP トレーナーになろうとしている日本人の方々が、日本市場でみごとに輝き、コーチングおよびトレーニング活動でまったく新しい品質水準を打ち立て、パフォーマンス基準を著しく高めることができるようになるであろう、予想しています。
私たちは、私たちのプリゼンテーションを日本文化の必要条件に合わせるという挑戦を提示して、日本の果てしなく豊かな文化について私たちを教え始めてくれたコース参加者に感謝いたします。
「ありがとうございます。」
ジョン グリンダー&カルメン ボスティック
Message from Dr Grinder
The experience of working to create the best NLP coaches and the best NLP trainers in the Japanese market has been an exciting and rewarding experience for Carmen and me. I am not describing anything new for the reader to point out the reluctance, at least initially, of Japanese participants in groups of 25 or more to participate, to volunteer to be demonstration subjects, to offer questions and comments and, in general, to engage in public behavior in such a context.
Further, Japanese culture has been classified as a high context culture. By high context culture, the anthropologists are referring to the observed fact, for example, that in conversations between two Japanese people, what is NOT expressed explicitly is the important portion of the communication. One consequence of this pattern is that various tools in Neuro-Linguistic Patterning (NLP) in both the classic code and the new code that have as their objective, the precise specification of the linguistic content of the exchanges (through the manipulation of syntactic forms) – here we have in mind, the meta model, the Precision model and the verbal package – are not naturally mastered and utilized by the Japanese students participating in the two courses. This is so as the application of these tools fly in the face of the habitual patterning within traditional Japanese culture.
This is both a challenge and an opportunity. the challenge for us is to create a learning context in which the Japanese student feels able to apply these tools to discover the consequences and to overcome the feelings of unfamiliarity that arise because of the lack of experience in this type of concrete verbal communications. The opportunity is perhaps best captured as the story of the one-eyed man who stumbled into the valley of the blind.
This last reference is a more traditionally Japanese way of making the following concrete point. In a high-context culture, a person well-trained in the set of patterns mentioned above will have a tremendous competitive advantage as he or she is able to accomplish things that others are unable to achieve because of the constraints (internalized) of the traditional practices of the culture.
WARNING
The successful application of these highly advantageous patterns that clash with normal cultural practices (the verbal specification tools) REQUIRES that the Japanese student applying these patterns have the following skill sets and uses them effectively:
rapport – to sustain the positive connection between the unconscious of the client and their own unconscious – this can be most easily accomplished by the combination of framing for intention by the practitioner and the ongoing use of body rapport (mirroring, for example), and matching unconsciously preferred representational systems
calibration – to know with precision by calibrating the non-verbal signals that indicate what state is being induced in the Japanese person by the activity (the specification process) and therefore whether what is occurring is acceptable (rapport is present, strong and ongoing)
flexibility – to shift to more familiar forms of verbal communication if the non-verbal signals indicate that this is NOT an acceptable process for the client
We predict that with disciplined practice, especially on the ability to create and maintain rapport, these specification tools along with master of other sets of NLP patterns will allow the Japanese students. presently candidates for NLP coach and NLP trainer to shine brilliantly in the Japanese market and set an entirely new standard for quality in these activities: coaching and training, raising the standards of performance significantly.
We wish to thank our Japanese students for presenting us with the challenge of adapting our presentation to the requirements of the Japanese culture and thereby to begin to teach us about the enormously rich culture of Japan
Arrigato gozaimas.
John Grinder and Carmen Bostic
3. 日本 NLP 学院プラクティショナー コース情報
日本 NLP 学院公認プラクティショナー認定証発行の NLP プラクティショナーコース東京 6 期、大阪 4 期がまもなく開講されます。
これらは、NLP の基礎理論と実習を修得し、NLP を実践するための技能と知識を習得するためのコースです。コース参加者は、「効果的なコミュニケータ」になるための最低必須条件となる諸技能を習得することができます。コース開講期間は以下のとおりです。
東京 6 期: 平成 18 年 6 月~平成 18 年 9月
大阪 4 期: 平成 18 年 5 月~平成 18 年10 月
これらの認定コースの詳細については、以下の日本 NLP 学院の Web サイトを参照してください。
http://www.nlpjapan.com/
4. 北岡泰典公式ワークショップ シリーズ
東京での第九回ワークショップ「ワークその 2 『オルタード ステーツ (変性意識) とは?』 レクチャー 2.3 『SDMLB (状態依存の記憶、学習、行動』」は、2006 年 4 月 12 日 (水) にホテル ヴィラ フォンテーヌ汐留コンファレンス センターで成功裏に開講されました。
次回第十回ワークショップ「ワークその 2 『オルタード ステーツ (変性意識) とは?』 レクチャー 2.4 『印度哲学と NLP の接点』」は、5 月 24 日 (水) に開講されます。
ワークショップの詳細は以下の通りです。
– レクチャー 2.4 『印度哲学と NLP の接点』
開催日時: 2006 年 5 月 24 日 (水) 18 時~21 時
開催場所: ホテル ヴィラ フォンテーヌ汐留コンファレンス センター
募集人数: 10 名 (予定)
参加費: 事前振込み 1 万円、当日支払い 1 万 2 千円
このワークショップでは、インド哲学、特にヴェーダンタが数千年前にインドで科学的に発見した内容と 20 世紀後半にアメリカ西海岸で生まれた NLP が提示してきているモデルとは、ただ一つの例外を除いて、ほぼ同一であることが検証、実証されます。
演習としては、NLP の諸前提を実際的に右脳的に体に落とし込むための「諸前提演習」が予定されています。
参加申込みサイト: www.kitaokataiten.com/work/top.html
(注意: 参加申込みの混雑が予想されますので、申込みはお早めにされるようお勧めします。)
大阪での第三回「北岡泰典公式ワークショップ シリーズ」は、4 月 21 日に、「ワークその 1『汝自身を知れ』 レクチャー 1.3 『ガチョウは外だ!』」として成功裏に開講されました。
第四回ワークショップ「ワークその 1『汝自身を知れ』 レクチャー 1.4『NLP は瞑想に取って代われるか?』」は、5 月 26 日 (金) に開講されます。
参加申し込みの詳細は以下のサイトを参照してください。
http://www.holonpbi.com/nlp/kitaoka.htm
大阪北岡泰典公式ワークショップの紹介ページは以下にあります。
http://www.kitaokataiten.com/archives/2005/09/osaka.html
作成 2023/11/19