以下の文章は、北岡泰典のメルマガ「旧編 新・これが本物の NLP だ!」第 44 号 (2005.11.25 刊) からの抜粋引用です。
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今回は、私の公式ワークショップ シリーズの最新情報を中心にお伝えします。
1. 第四回北岡泰典公式ワークショップ参加者募集開始!
「北岡泰典公式ワークショップ シリーズ」が 2005 年 11 月 2 日から始まり、第二回ワークショップ「ワークその 1「汝自身を知れ」、レクチャー 1.2 『ニューロロジカル レベルと五つの鞘』」は、11 月 16 日にホテル ヴィラ フォンテーヌ汐留コンファレンス センターで、成功裏に終了しました。
このワークショップでは、NLP 共同創始者ロバート ディルツの提唱する「ニューロロジカル レベル (心身論理レベル)」は、印度ヴェーダンタ哲学の中心的概念の一つである「五つの鞘」の概念と完全マッピングが可能であることが解説されました。
次回第三回目 (12 月 14 日開催) の北岡泰典公式ワークショップ「ワークその 1「汝自身を知れ」、レクチャー 1.3 『ガチョウは外だ!』」では、「今ここ」にいることで、すべてのマインドの問題は瞬時に消え去って、「悟りの境地」にいれるということを意味する、禅考案の「ガチョウは外だ!」についての考察がなされ、かつこの洞察は、たとえば NLP の「信念アウトフレーミグ公式」演習等によって、右脳的に、体感覚として、実際に体感できることが実証されます。
この第三回公式ワークショップの参加者募集は、残念ながら、募集定員に達し、すでに締め切られていますが、本メルマガでは、第四回公式ワークショップの参加者募集を開始します。
第四回公式ワークショップでは、通常、瞑想と言われている方法論は、ほぼすべて例外なく 2,500 年前のヨギのパタンジャリが著した「ヨガ ストラ」に基づいていますが、25 世紀ぶりに人類に訪れた革命的方法論である NLP が、この瞑想の方法論に取って代わることのできる、現代的なツールであるかどうかが、考察、検証されます。
特に、ヨガの四分類であるカルマ ヨガ (日常の仕事の道)、バクティ ヨガ (崇拝の道)、ラージャ ヨガ (サイキック コントロールの道)、ジュナーナ ヨガ (哲学の道) のうち、NLP は現代のラージャ ヨガあるいはジュナーナ ヨガに相当し、しかも、現在利用できる最高の西洋的ラージャまたはジュナーナ ヨガの方法論であることが、考察、実証されます。
詳細は以下のとおりです。
開催日時: 2005 年 12 月 28 日 (水) 18 時~21 時
開催場所: ホテル ヴィラ フォンテーヌ汐留コンファレンス センター
http://www.villa-fontaine.co.jp/shiodome/
トピック: ワークその 1「汝自身を知れ」
レクチャー 1.3 『NLP は瞑想に取って代われるか!』
募集人数: 36 名
参加費: 事前振込み 1 万円、当日支払い 1 万 2 千円
参加申込みサイト: www.kitaokataiten.com/work/top.html
(注意: 参加申込みの混雑が予想されますので、申込みはお早めにされるようお勧めします。)
本ワークショップ シリーズでは、前のワークショップの参加が次のワークショップへの参加の条件とはなりませんが、北岡の「変性意識ワールド」の全容を知るには、できるだけ多くのワークショップへの参加をお勧めします。
各ワークショップでは、参加者の「的を得た」あるいは「的を得ていない」質問が大歓迎されます。これは、北岡は、「プリゼンター」というよりも「対話的ワークショップ トレーナー」であるために、ワークショップの質をできるだけ高めるためには、「質問を食べる獏」である北岡には、参加者からのフィードバックが最重要要素だからです。
今後も、「ワークその 1 「汝自身を知れ」」のテーマ下で、以下のようなワークショップが予定されています。
– レクチャー 1.1 『アンカーリングと真の自己』 (開催済み)
– レクチャー 1.2 『ニューロロジカル レベルと五つの鞘』 (開催済み)
– レクチャー 1.3 『ガチョウは外だ!』 (参加受付終了)
– レクチャー 1.4 『NLP は瞑想に取って代われるか?』
– レクチャー 1.5 『掲諦掲諦 波羅掲諦 波羅僧掲諦/Gone, Gone, Gone Forever』
– レクチャー 1.6 『マインドでマインドを超えられるか』
本ワークショップ シリーズの今後のトピックのさらなる予定詳細は以下のサイトで参照可能です。
www.kitaokataiten.com/archives/2005/09/workshop_topics.html
2. 天才についての北岡式再考察
本メルマガを通じて、また、私のワークを通じて、私は、 首尾一貫して、「NLP は天才になるための方法論をマッピングした」と主張してきています (少なくとも、これが、1987 年発行の著、『どんどん下に重なっていく亀 – 個人的天才になるための必要条件』以来、NLP 共同創始者のジョン グリンダー氏の立場だと思われます)。
確かに、このような NLP に関する定義は、たとえば、グリンダー氏の今年初めの来日のための同氏自身の以下のような挨拶にも反映されています。
「約 30 年前に (NLP 共同創始者の) リチャード バンドラーと私は、次のような問いを探求する偉大なる旅を始めました。
その問いとは、以下のようでした。
『天才と平均的パーフォーマーの違いとは何であるか?』
『これらの違いは他人においても再現できるのか? つまり、我々すべてにインスピレーションを与えてくれる天才のようなパフォーマンスは他人でも学習できるのか?』
研究の中で、私たちは驚くほどの可能性を発見してきました。そしてその探求の過程において NLP (神経言語プログラミング) を創始したのです。いうなれば NLP と は、『天才と平均的パーフォーマーの違い』に関する研究の成果であります。これらの違いは、いったん明らかにされると、多くの技能に共通していて、さらに、非常に有効なことに、私たちがモデル化した元の天才と同じ分野で活動している他の人々に教えることができることが判明しました。この卓越性のモデリングは、家族生活の改善、自己啓発、ビジネス 、スポーツ、芸術といった幅広い分野に適用できる、明白で学習可能なツールを生み出しました。」
NLP の「天才になる」ための明示的な方法論は、少数の要素のツールの組み合わせで、私は、それらのツールについては、本メルマガと私のワークを通じて、「断片的」に言及してきていますが、本号のメルマガで、全般的なパッケージとして「天才になるための方法論」を項目化して、まとめてみたいと思います。(全体で、5 項目あります。) 下記には、すでに何度も言及してきたことも、新しいことも含まれています。
A. 天才になるためのツールその一、「目的達成モデルを利用してアウトカムを明確化する」
「目的達成モデル」は、(1) 自分の「目的」 (どの分野でどのように天才になりたいか) を確定する、(2) 「知覚鋭敏性」を強化する、(3) 「柔軟」でいる、の 3 ステップから成り立っています。
たとえば、プリゼンにおいてピーク パフォーマンスを発揮したい場合は、まずどのような文脈でどのレベルのパフォーマンスを達成したいか、自分自身の「アウトカム」を定義する必要があります。ここで、人間の脳は人工の熱感知追跡ミサイルとまったく同じように機能するので、まず自分のマインドで自分自身の明確な目標をもつ必要があります (マクスウェル マルツ著の「サイコサイバネティクス」を参照してください)。この目標は、知覚ベースの基準で設定される必要があります。言い換えれば、自分の目的を達成したときに自分が見て、聞いて、感じていること等で表出される必要があります。
次に、パフォーマンス発揮時に、自分自身の知覚 (知覚経路) を使って、自分の目的を達成しているかどうかをチェックします。(たとえば、プリゼンしている相手の人々の顔、首、手、足の「極微筋肉動作」、呼吸の深さと位置、瞳孔の大きさ等を検出 (つまり、カリブレート) できるように自己訓練することが可能です。) 知覚鋭敏性は、「ダウンタイム」にいるときに最低か、またはおそらくゼロである一方で、「アップタイム」にいるときに最高になることに留意してください。
最後に、自分が欲するものを手に入れるまで、自分の行動を変えることができる柔軟性が必要になります。
この「柔軟性」は、 「最小必要多様性の法則」の概念とも関連性があります。また、特定の状況でたった 1 つの選択肢しかもっていないなら、行き詰まります。2 つもっている場合は、ジレンマに陥ります。「自由」であると言えるようになるのは、3 つ以上の選択肢をもてるようになったときだけです。
仮に特定の状況で他の人より多くのことに気づいている場合、他の人よりも多くの選択肢をもち、さらに柔軟であるので、状況をコントロールできるようになるのは明白なことです。
『ビジネスを成功するための魔法の心理学』の著者、ジェニー ラーボード女史は、この目的達成モデルの 3 ステップに、もう一つ「首尾一貫性」の要素を追加しています。
ちなみに、本メルマガの最近の号でも示唆しましたが、NLP は、その実践家にアウトカムをもたらせる、あるいは明確化させることができるようには思えません。NLP は、あくまでも、中立の、革新的な方法論にすぎず、それを何にどのように使うかは、全面的にその実践家の決定に任されています。
B. 天才になるためのツールその二、「天才になるための 5/360 度を確定する」
NLP 開発者 (ジョン グリンダー、ロバート ディルツ、その他) は、子供たちがどのようにスペルが得意になるかを発見し、NLP テクニックの一つである眼球動作パターン、および TOTE モデルを使ってそのプロセスをモデル化しました。
本メルマガの目的上、この「スペル ストラテジー」の詳細は、ここには記されませんが、私のプラクティショナー コースでこのテクニックが参加者に紹介され、その効果性が実証されてきています。また、私自身も、自分自身の経験から、この手順がまさしく私が英語を学習していたときに (おそらく試行錯誤の後無意識的に) 採用した個人的なスペルの方法論であったことを確認することができます。
仮に NLP 研究によって発見された、このスペルが得意になる方法が学校で教えられたら、すべての子供たちがそれから利益を得ることは間違いありません。伝統的な学校の教師はどのようにしたらスペルが得意になるかについてまったく知らないので、その生徒にどんなやり方でもいいから試してみなさいと指示するかもしれません。スペルが得意になるこの普遍的な方法をたまたま発見することのない生徒がいかに多いかは驚くに値しません。
この状況は、子供たちが 360 度の円のあらゆる方向にランダムにさ迷い始め、そのうちのほんのひと握りの子供だけが、適切な方法が採用される、たとえば 5 度の角度内にたまたま入り、これによりスペルが得意になるようなものです。
たまたま適切な方法を知ることには至らない人はおそらく永久に自分の学習プロセスを速めることはできないままとどまるでしょうし、さらには、いくら学習してもスペル力が高まらないので、ますます英語が嫌いになっていくことでしょう。その反面、適切な方法を知っているという事実だけで、その人がうまい学習者になることはないということを指摘するのは興味深いことです。依然として多くの努力と骨折りが学習を習得するために必要とされますが、これらの努力と労力は、今度は、費やした分だけ比例して必ず報われることになります。
この際、スペルがうまくなる方法の明示的なマッピング方法がないまま、生徒にスペルを向上するように指示する伝統的な学校の教師からは、私は、自分の弟子に「ただ私を模倣しなさい」としか指示できない伝統的な瞑想または武道の師匠のことを思い出します。(このような師匠は、弟子に知的分析を止めるように指示する場合もありますが、その理由は単に自分自身がそのような分析を扱いきれないからだけかもしれません。)
つまり、このスペル ストラテジーの有効性からもわかるように、一式の「天才になるための方向性」が確定できたら、すなわち、「成功間違いなし」の 5/360 度の範囲で学習することができれば、努力すればするほど自分の天才性が伸びるので、モチベーションがますます高まります。ただし、依然として多くの努力と労力を費やすことは必要とされていて、これらの努力と労力がなければ、学習者はどこにも進みません。
C. 天才になるためのツールその三、「演繹法と帰納法の両方を使う」
上記の B. の項目にも関連してきますが、再度、語学学習を例にして言うと、私には、なぜ日本人が英語ができないかの理由が解明できていて、かつ矯正法も提示できる立場にあります。
手短に言うと、日本人の英語学習法は、ほぼ常に「単語の並び替え」であり、いわば、下の論理レベル (単語のレベル) から、上のレベル (句、節、文等のレベル) に「チャンク アップ」しようとしているだけです。 これでは、英米人が聞いたらわけのわからない英語しか組み立てることはできません。
実は、私が英語を読み、聞き、話し、書く際は、そのようなチャンクアップのベクトルと同時に、最上部の統語 (あの S+V 等の五文型のことです) のレベルからチャンクダウンするベクトルが常にあり、そこに単語を当てはめることで、逐次英語を理解しています。つまり、このチャンクアップとチャンクダウンの継続的なインターフェイスで、私は英語を読み、聞き、話し、書いているのです。(ここで、チャンクダウンのベクトルの方が先または優位であることに注目してください。)
ちなみに、私には、なぜ、学校教育において、中学校と高校の初年度の第一学期の冒頭にしか統語 (五文型) を教えず、その後の授業で継続的に生徒にチャンクダウン (演繹法) のベクトルを意識化し続けるように教育しないのか、その理由がわかりません。また、最近、非常に有名な英語学習塾が、「話す -> 聞く -> 書く -> 読む」といった、左脳的な英語学習を排して、母国語をしゃべる人々が英語を学ぶ際の学習順序を推奨しているようですが、帰納法だけしか学習方法のない子供の場合はともかくとして、すでに自分の世界地図を確立してしまっている大人の英語学習者に帰納法の方法だけを押しつけるのは、あまりにも邪道のように思えます。
私自身は、おそらく明治維新以来日本人の身についている、この「不適切な英語学習法」を矯正できる、もっとホーリスティックな方法に基づいた「NLP を使った英語学習ソフト」をすでに考案していて、今後実際のソフト開発プロジェクトを実行に移したいと思っているところです。
このように、ある分野で天才になるためには、その分野で普遍的に適用されている公式、規則、パターンをまず「演繹法 (= チャンクダウン)」的に習得し、その上で詳細な学習要素を、適所適材に選ばれた公式に当てはめていく「帰納法 (= チャンクアップ)」的な作業を地道に、継続的に続けていく必要があります。(ただし、ここでは、B. の項目でも考察したように、自分の努力と学習向上度が、いわば比例しているので、モティベーションに欠けるということはありません。)
このように、天才とは (時間と労力を節約する) 演繹法と (時間と労力が永遠に必要とされる) 帰納法の両方に長けている人、と定義できます。
D. 天才になるためのツールその四、「7 つの選択肢で 82 万通りの柔軟性を見せる」
本メルマガ第 5 号の『北岡式学習加速法』 で、私は以下のように書きました。
「フラクタル デザインは、単純な式に基づいた演算を行うことにより生成されます。演算の結果を同じ式に再入力しながら、このプロセスが何度も反復されます。フラクタル図の 1 例が、以下のリンクのページにアクセスすれば閲覧できます (「2. フラクタル図 その 1」)。
http://www.creativity.co.uk/creativity/jp/magazine/library/diagram.htm
<中略>
学習加速化の観点から見ると、フラクタルのコンセプトによって、なぜ短時間で容易に学ぶことが可能な人がいる一方で、学習速度が遅い人もいるのかの原因を解明できるかもしれず、また、学習プロセスを加速することにおいて支援になるかもしれないという点において、フラクタル モデルは大きな意味合いと可能性をもっています。
[たとえば、0% から 60% までの学習進歩を遂げる初心者のテニス プレーヤーと 99% から 99.9% までの進歩を遂げるトップのテニス プレーヤーに関して、両者とも同じ量の努力とエネルギーが必要かもしれないという示唆については] 以下のリンクのページにあるフラクタル図 (「3. フラクタル図 その 2」) を見ると、比喩的に理解ができます。
http://www.creativity.co.uk/creativity/jp/magazine/library/diagram.htm
すなわち、この図の一番下のレベルでは、一回の処理で非常に大きな (粗野な) 変化を達成することができますが、一番上のレベルでは同じフラクタル処理をしてもごく小さな (極微の) 変化しか達成できません。
また、この際、この図の各レベルにおける変化は規模は違っても、風船を膨らませたときに始めに風船上に書いていた字がそのまま同じまま大きくなっていくように、パターン自体はまったく変わらずにいます。このことは、同じ基礎パターン、すなわち、同じ基本的なテニスのラケットの振り方が、初心者のレベルでも上級者のレベルでも、同じように繰り返される必要があることがわかります。
通常は、人々は、上級学習者は他の人々には達成不可能なような非常に複雑なことを学習、達成していると思いがちですが、上記の観点から見ると、非常に簡単な一定数の (おそらくは 5~9 つの) 基本的テクニックを完全マスターし、それらのパターンをただ忠実に反復しているにすぎないであろうことがよくわかります。
なぜ、このような上級者が反復している基本的テクニックがアウトサイダーには非常に複雑に見えるかは、上述の『チャンク』のコンセプトと組み合わせて考えるとよく説明できます。
すなわち、たとえば 7 つの基本テクニックを完全習得した学習者は、その 7 つのテクニックの一つを他の一つのテクニックと組み合わせ、その結果生み出された「新しい」学習パターンに、再び 7 つのテクニックのうちの一つを組み合わせるという単純な作業をたった 7 回反復するだけで実に 823,543 (7 の 7 乗) 通りの学習パターンを達成することができるようになります。(仮に、ここで「達成することができる」という断定的表現に語弊があるようであれば、「823,543 (7 の 7 乗) 通りの学習パターンを達成できる柔軟性を獲得することができるようになります」と言い換えることができます。)
このように、『チャンク』と『フラクタル』のモデルを組み合わせることで、『学習の学び方の学び方 (How to Learn to Learn to Learn)』とその学習過程を飛躍的に加速化するメカニズムの解明が可能になり、また実際にどのような学習態度で臨めば自分の学習過程の加速化が計れるかが非常に明確になります。」
すなわち、私は、上記の引用で、ある人が 7 つの選択肢 (たとえば、比喩的に言えば、ある状況で自分が使える行動パターンが保存されている CD-ROM) をもっていて、状況ごとに、その 7 つの選択肢から一つの選択肢 (CD) を選ぶというプロセスを 7 回繰り返すだけで、82 万通り以上の柔軟性を見せることが可能だ、いうことを示唆しています。
さらに、これこそが、天才と言われているパフォーマーが、そのトリック (= 公式) を見破れない素人には、信じられない行動様式を達成しているように見える一方で、当の本人は、実は、数少ない同じ行動パターンを一定の規則にしたがって (意識的または無意識的に) 選択し、発揮しているにすぎないことの理由を説明すると思われます。
E. 天才になるためのツールその五、「基本を完全習得した上で、パターン中断を行う」
本メルマガ第 12 号で、私は以下のように書きました。
「普遍的学習規則の根幹にあるのは『基本を完全マスターして、忠実であれ』ですが、このことが理解できない人々が驚くほどたくさん存在するようです。
一つ例を挙げて言うと、英国で私にはアート/ファッション系の学校を卒業した友人が何人かいましたが、彼らは、(Mac ではなく PC でしたが) コンピュータの操作にまったく四苦八苦しているようでした。そのうちの一人にコンピュータの基本操作を教えたこともありましたが、Ctrl キーを押しながらマウスをクリックすれば、非連続のアイコンを複数選択または選択解除できることも、エクスプーラの右ペイン (小ウィンドウ) のデータ アイコンはそのレベル (床) にあるファイルである一方で、フォルダ アイコンはいわばその床にある開きドアのようなもので、そのフォルダをダブルクリックして開けることで、さらに低いレベルのフォルダ階層にどんどん下りていけるというコンセプトさえもわからないでいることを知って驚愕しました。(その人からは、私が 1995 年 の Windows 95 発売以降にコンピュータ操作を学び始めた数年前に「私はコンピュータ プログラミングの学校に通っている」と聞いていたので、私はこのような驚愕を覚えたわけですが、当の本人は、コンピュータ操作について何も知らなかった私が、学び始めてニ、三ヶ月以内に基本以上のコンピュータ UI 操作をマスターしたことを知って、逆に心底から驚愕していたということです。)
私が短時間でコンピュータ UI 操作を習得した方法は、分厚いマニュアルを読破したのではなくて (通常は、このことが必要だと思って、基本をマスターする気をなくしてしまう人々が多くいるようですが)、当時、ロンドン市内の日本書店に行って、何冊かコンピュータ関連の週刊および月刊の雑誌を購入して、その付録の『Windows 95 をマスターするための 100 のコツ』といった小冊子を使って、自力でコンピュータを前に自己演習してこれらの基本テクニックを習得する、というものでした。これらの「無限数ではなく有限数」のテクニックは、言ってみればテニスの場合のラケットの素振りのようなもので、これらの基本テクニックの完全取得、無意識化 (つまり、自動化) なしには、絶対にそれ以上の高度なテクニックをマスターできないことはかなり明らかであると、私には思えますが (そしてさらに、その「高度なテクニック」というもの自体も、実は、すでにマスターした『低次のテクニック』をいくつか組み合わせた、比較的学習が簡単なテクニックであることにすぎないことが多いのですが)、『我流』の方法で自分で法則を見つけていくんだ、そしてそのことが創造的であることの証なのだ、という意気込んだ姿勢で取り組んでいる私のアート系の友人には、この「基本で忠実であることが、実は、その該当の学習エリアで、他の人が達成できないような創造性を生み出していくための前提となる必須不可欠の条件である」という「この曖昧にして明瞭な」事実は思いもよらないであろうと思います。確かに、創造的であろうとするがゆえに、学習過程の入り口を間違って、その学習領域で一生創造的でありえることができないでいる、というのは、非常に悲しい逆説的教訓です。」
すなわち、独自のオリジナリティ、クリエイティビティを発揮できる天才は、実は (意識的、無意識的に) 原理主義的な本道の公式、規則を完全習得した上で、少しだけ「パターン中断」することで天才たりえているのであろうことは、究極の逆説のように聞こえます。
この点については、グリンダー氏は最近の NLP トレーナーズ トレーニング コースに関するメッセージで、以下のように語っています。
「トレーナーズ トレーニングは、世界、特に日本の方々に紹介されている NLP のクオリティを高める特別な機会です。NLP 共同開発者と共同創始者の私たちの観点から言うと、『NLP プラクティショナー』は、NLP で行われているモデリングと他の学問分野で活用されているモデリングとを区別することができ、形態 (プロセス) と内容の差異を直感的に認識し、NLP の基本パターンにおいて行動的有能性を達成している人です。プラクティショナーは、NLP とその適用パターンについて口で語れるかもしれませんし、語れないかもしれませんが、最重要なこととして、プラクティショナーは、実際に基本的パターンを効果的に適用する能力を備えています。プラクティショナーの習得度は、さらに、首尾一貫した (NLP パターンの) 自己適用と、意識と無意識のプロセス間の正確で効果的なコミュニケーションを可能にさせる効果的な一式の自発的シグナルによっても適切に判断することができます。『NLP マスター プラクティショナー』は、NLP プラクティショナーの必要条件をすでに満たし、その上で、NLP の卓越性の基本的パターンについて知的に口で説明することができ、NLP の前身となっている分野の知的および歴史的背景について一定の理解度をもち、これらの基本的な適用パターンについて複数のバリエーションを使いこなせる人です。この、最後の特徴は特に重要です。NLP の基本的パターンについて複数のバリエーションを使いこなせるということは、マスター プラクティショナーは、基本的パターンの書面に書かれてある順序 (すなわち、手順) から自分を解放する方向に大きなステップを踏み始めたことを含蓄しています。基本的パターンを効果的に適用しているマスター プラクティショナーを見ているとき、能力のある観察者でも、そのマスター プラクティショナーが適用しているパターンを特定、分類するのはなかなか困難です。このように、マスター プラクティショナーの行動は NLP のパターン化原則に関して完全に体系的ですが、完全にクライアントの要求に焦点を合わせているので、マスター プラクティショナーは、典型的に、目的達成のために単一のパターンを使わずに、クライアントの変化する要求をカリブレートしながら、一つのパターンの局面から他のパターンの局面に優雅に正確に移ることができます。」
私は、個人的には、「基本的パターンを効果的に適用しているマスター プラクティショナーを見ているとき、能力のある観察者でも、そのマスター プラクティショナーが適用しているパターンを特定、分類するのはなかなか困難です」というような、基本的な規則を習得した上でのパターン中断の技能は、マスター プラクティショナーというよりも、むしろトレーナーのレベルで可能になるのでは、という思いもありますが、いずれにしても「基本を完全習得した上で初めてパターン中断を行う」ことが、天才になるための奥義だと考えます。
作成 2023/11/10