以下の文章は、北岡泰典のメルマガ「旧編 新・これが本物の NLP だ!」第 41 号 (2005.10.17 刊) からの抜粋引用です。
* * * * * * *
私は、本メルマガの次号の発行を準備していましたが、NLP 共同創始者のジョン グリンダー氏から、グリンダー氏とその共同トレーナーであるカルメン ボスティック サンクレア女史による「NLP 共同声明」、および NLP 共同開発者のロバート ディルツ氏の同声明に対する紹介文の原文と翻訳を公表するように依頼されました。以下にその 2 つの共同声明を発表します。なお、今号で発表が予定されていたメルマガ内容は、2、3 日後に発行が予定されている第 42 号で発表することにします。
本メルマガ、および私の資格コースにおいて、私は、NLP 共同創始者のジョン グリンダー氏が、NLP 共同開発者のロバート ディルツ氏に対して「内容モデルとプロセス モデルの区別」について混同している、という意見をもたれている、という示唆を繰り返してきました。
しかしながら、数ヶ月前に (人間的には、ずっとグリンダー氏が友人と見なしてきていた) ディルツ氏がグリンダー氏に求めた個人的支援をきっかけに、「内容モデルとプロセス モデル」についての継続的議論がなされ、その結果、お二人の間の意見の差異は解消され、グリンダー氏とその共同トレーナーであるカルメン ボスティック サンクレア女史は、「NLP モデリング」の用語定義についての「共同声明」を発表し、ディルツ氏も、その声明への紹介文として別途声明を発表することになりました。
以下にこの 2 つの声明の全文の和訳と原文を掲載します。 これを機会に、国内でも、私がこれまで示唆してきた「NLP 業界のホーリスティックな再編成」が加速され、NLP テクノロジーが国内で、欧米の過去 30 年間に起こったような NLP の大ブレークが真の意味で始まることを心から期待しています。
なお、この共同声明の公式リリース日は 2005 年 10 月 17 日です。
(注: 以下の共同声明で記されている「NLP モデリング vs 分析的モデリング」は、本メルマガの第 27 号で私が提起している「大文字のモデリング vs 小文字のモデリング」あるいは「無意識的モデリング vs 意識的モデリング」と対応しています。)
NLP (神経言語プログラミング) の用語定義の提案声明のための紹介文
NLP を知っている、または関心をもっていると主張する人であればどんな人でも、モデリングがこの分野の生命線であることを認識しています。NLP の端緒とその継続的進化は、例外的な人々の言語、認知過程、行動パターン (すなわち、「神経/言語/プログラミング」) をモデリングする NLP 実践者の能力から派生しています。NLP の基盤は、モデリングであり、その跡に残された「テクニックの寄せ集め」ではない、ということは頻繁に指摘されています。
モデリングがこれだけ認識され、強調されているにもかかわらず、これまで、NLP モデリングとは正確には何なのか、についての明確な、共有された見解は存在しておらず、また、モデリングにはいろいろな多様性があるという事実も見逃されてきていました。
ある人にとっては、モデリングは、基本的には、「ストラテジーの引き出し」です。別の人にとっては、それは、単に、一定の現象を描写する際に NLP 用語を使用することを意味します。モデリングを、鍵となる行動の模倣と捉える人もいます。
最もパワフルで、生成的なモデルは、観察対象の人または人々の深層構造の部分を取り込むモデルです。このことは、表層レベルの行動を描写したり模倣したりすることとはかなり異なっています。この深層構造まで達することが NLP の無上の功績であり、また、特別の方法論が必要とされます。
この紹介文に続く声明の中で、ジョン グリンダーとカルメン ボスティック サンクレアは、NLP の当初のテクニックと用語が派生したユニークな形態のモデリング (すなわち、「NLP モデリング」) と、NLP 用語を適用してはいるが別の情報収集およびパターン特定方法を使用している、他の形態のモデリングを区別するための一式の基準を明確化しています。
この声明に提示されている区別は、NLP の知識体系 (「認識論」) について、私たちがもったいくつかの継続的議論から生まれたものです。特定の文脈処理または特定の目的達成のためには、他の形態のモデリングが有効であり、ときには必要である場合もありますが、ジョンとカルメンが提案している区別と基準は、一分野としての NLP にユニークな特徴をさらに明確に確立し、尊重し、さらに、その知的歴史に敬意を払うためには、不可欠であると私には感じられます。
私は、私自身のモデリング ワークはしばしば、ジョンとカルメンが「分析的モデリング」と形容しているカテゴリに分類される場合があり、他の場合、分析モデリングとさらに純粋な NLP モデリングの組み合わせを応用していることを認めます。私は、この区別を確立されたことに関し、ジョンとカルメンを完全支援しますし、また、NLP 実践者が NLP モデリングのユニークな形態を学び、分析的モデリングとの違いを理解することが、極めて重要である、と信じています。
ジョンとカルメンが述べているように、声明で提示されている区別は、NLP 分野にコミットされている人々の間で、NLP の真にユニークな貢献についてさらなる明確さ、正確さ、理解をもたらせる目的の継続的で、願わくは実り多い対話が始まるきっかけになるように意図されています。
グレゴリー ベイツンがよく言っていたように、「このことが聞かれますように」!
ロバート ディルツ
NLP (神経言語プログラミング) の用語定義の提案声明
特に初期のパターン化をまだ組織化している最中の分野を含むどの学問分野の発展に関しても、その基本的用語に関して正確さを期すための一定の注意深さが必要となります。従来の学問分野は、基本的用語を (一回かぎりまたは反復的に) 明確化しながら一見して比較的安定した土台を確立した上で、さらなる研究と専門的意見交換を促進させたか、または、しばしば定義が明確でない用語の曖昧さの犠牲となり、脆弱で、場合によっては致命的な弱点を背負ったまま、さらなる重要な発展を達成できないまま終わりました。このような定義が明確でない用語は、まるで土台からはみ出た棹に突き刺さった布切れのようなもので、風の動きのままあてもなく揺り動かされ続けます。
規格化した用語について決定する際に、一定の注意を払うことが必要です。一般的には、経験における区別を定義するためには異なった描写的用語が使われる一方で、概念的な派生は「同値類」として扱われます。これは、形成時期にある学問分野の通常の手順です。これにより、いずれにせよ、理想的には、豊かな用語、描写的正確さが達成され、同時に、表現の効率性も達成されます。
本声明が特に対象としている用語は、NLP (神経言語プログラミング) で使用されている「モデリング」という用語です。特に、NLP 分野で実践されているモデリングとさらに一般的な他の分野で実践されているモデリングとの区別が問題となっています。
NLP 分野を創始した初期モデルの作成時の NLP モデリングは、現在の時点において、および今後の NLP において、NLP のモデリングに適用される以下の二つの基準を正しく認識し尊重することを含蓄しています。
1. パターン化の自己同化の段階および以下の基準が満たされるまで、天才または卓越性のモデルのパターン化を意識的に理解しようとする分類的および分析的試み (『風の中のささやき』(www.nlpwhisperinginthewind.com を参照のこと) ではすべて F2 と定義されているもの) をすべて一時停止する能力を有している必要があります。
2. モデラーは、類似した文脈でモデルのパターン化を複製できる能力、および、その文脈で、モデラーが引き出したパターン化の、難しいが同時に価値あるコード化を達成する前に、モデリング対象の天才または卓越したモデルとぼぼ同じパフォーマンスを、大体同じ質、時間的制約においてクライアントから引き出すことのできる能力を証明する必要があります。
私たちは、さらに、上記の基準を満たさないモデリング ワークの産物は、すべて、他の論理タイプのモデルとして分類される必要があることに注目します。NLP 適用の技術で使用可能なパターン化と用語を使いながらも、NLP モデリングの定義を満たしていない、このようなワークの産物を定義する一般的用語として、私たちは「分析的モデリング」という用語を提案します。
NLP モデリングが含蓄するさらに拡張した、要求の厳しい条件が該当しないか、または、天才または卓越した個人のパターン化の解析に関して最も効果的で有効な戦術が求められるような適用 (たとえば、語り部のモデリング) または文脈 (たとえば、モデルが傍に存在しない、または亡くなっている場合) が存在することも非常に明らかです。私たちは、本声明で、NLP モデリングを定義すると私たちが提案している基準は満たさないけれども、学習のための戦術として、完全に正当な他のモデリング形態も存在することを認知することを意図しています。
NLP モデリングと分析的モデリングのプロセスの結果の基本的な違いは、最終ワーク産物へのモデルとモデラーの比較的貢献度にあります。この違いは、原則的には、モデリング プロセスの際のモデラーの知覚的および分析的範疇の押し付けの程度の差に見つかります。NLP モデリングの場合は、この押し付けは最小限である一方で、分析的モデリングでは最大限です。この二つの両極の間には無数の可能性があることが意味され、さらに、他の形態のモデリングを実践している人々はさらに別の用語定義を提案したいと考えることでしょう。私たちは、このような用語定義の今後の洗練化を歓迎しますが、さしあたっては、本声明で提案されている定義で満足したいと思っています。
無意識的自己同化の段階ですべての認知的表出の展開を体系的に一時停止すべきという条件と認知的コード化を始める前にモデリング対象のモデルまたは天才と同じようなパフォーマンスを達成できる能力を実証すべきという条件は、これらの大きな違いの基本的要因を規定しています。
このような規定の背後にある意図は、NLP のおそらく最も画期的な貢献であるこの区別が維持され、この区別が体系的になされることで、人々が二つの論理的種類のモデルの違いと、その違いに含蓄される別個のモデリングの過程 (すなわち、NLP モデリングと分析的モデリング) の違いを正しく認識できることを保証することにあります。私たちは、本声明で提案されている区別を維持されるよう、また、どのようにしてこのような基本的な区別を NLP 分野において維持することができるかについて提言されるよう、適切な意図をもった NLP ピアの方々をお誘いします。
私たちは、さらに、モデリングを教えるコースに参加することを考えている NLP 共同体のメンバーの方々に、そのコースで教えられているモデリングのタイプについてコースのトレーナーから明確化を求められるようお勧めします。このような活動を通じて、NLP 分野で該当の区別が間違いなく維持され、さらに、コース参加者がどのタイプのモデリングを習得したいと思うかについて判断することができるようになります。
カルメン ボスティック サンクレア | ジョン グリンダー |
カリフォルニア、ボニー ドゥーン | 2005 年 10 月 |
Introduction to: A Proposed Distinction for Neuro-Linguistic Programming
Anyone who claims to know or care about NLP is aware that the process of modeling is the life blood of the field. The origin of NLP and its continued evolution come from the ability of NLP practitioners to model the verbal, cognitive and behavioral patterns (the “neuro-linguistic programs”) of exceptional people. It is frequently pointed out that the basis of NLP is modeling and not the “trail of techniques” that have been left in its wake.
For all of the acknowledgment and emphasis on modeling, however, there has not been a clear and shared perspective on exactly what NLP modeling is, nor an awareness that there are different varieties of modeling.
For some, modeling is essentially strategy elicitation. For others it simply means using NLP distinctions when describing some phenomenon. Others perceive modeling as the imitation of key behaviors.
The most powerful and generative models are those which capture something of the deep structure of the individual or individuals being observed. This is quite different than describing or imitating surface level behaviors. Reaching this deep structure has been one of the crowning achievements of NLP and requires a special methodology.
In the following article, John Grinder and Carmen Bostic St. Clair lay out a set of criteria for distinguishing between the unique form of modeling from which the initial techniques and distinctions of NLP were derived (“NLP modeling”) from other forms of modeling that apply NLP distinctions but use other means of information gathering and pattern fining.
The distinction presented in this article is a result of several ongoing discussions we have been having about the system of knowledge (or “epistemology”) of NLP. While different forms of modeling may be useful and even necessary in order address particular contexts or to reach particular outcomes, the distinction and criteria John and Carmen are proposing feel to me to be essential in order to more clearly establish and honor what is unique to NLP as a field as well as to respect its intellectual history.
I admit that my own modeling work frequently falls into the category that John and Carmen refer to as Analytic Modeling, and at other times applies a combination of Analytic and more pure NLP Modeling. I fully support John and Carmen in making this differentiation and believe it is vital that practitioners of NLP learn the unique form of NLP Modeling and understand its difference from Analytic Modeling.
As John and Carmen state, the distinction presented in this article are intended to be the beginning of a conversation for those committed to the field of NLP, an ongoing and hopefully fruitful conversation, to bring greater clarity, precision and understanding about the truly unique contributions of NLP.
As Gregory Bateson used to say, “Let it be heard.”
Robert Dilts
A Proposed Distinction for Neuro-Linguistic Programming
The development of any discipline, and especially one still organizing its initial patterning requires a certain attentiveness to precision in its fundamental vocabulary. Older disciplines have either clarified their fundamental terms (once or repetitively) and have established an apparent relatively stable platform on which further investigations and professional dialogue may be based.or they have fallen upon the sharp points that often protrude from their ill-defined terms, suffering debilitating and sometimes even fatal wounds that have precluded significant further development. Such ill-defined distinctions sway in the wind, impaled on these sticking points.
Some care must be given in making determinations with respect to a standardized vocabulary. In general, distinctions in experiences are awarded distinct descriptive terms while notional variants are assigned to equivalence classes. This is the normal business of a discipline during its formative stages: to achieve a richness of distinctions, a descriptive precision and simultaneously an economy of expression; in an ideal world, at any rate.
The distinction in question in this note is the term modeling as used in the field of Neuro-Linguistic Programming (NLP). In particular, the distinction between modeling as practiced in the field of NLP and modeling as practiced more generally.
NLP Modeling, in the creation of the initial models that founded the field of NLP, at present and in the future of NLP, references an appreciation of and respect for two criteria that apply to modeling in NLP:
1. the suspension of any taxonomic and/or analytic attempt (all f2 transforms as described in Whispering in the Wind, see www.nlpwhisperinginthewind.com) to understand consciously the patterning of the genius or model of excellence during the assimilation stage of patterning and until the following criterion is met
2. the modeler must demonstrate the ability to reproduce the patterning of the model in parallel contexts and in such contexts elicit roughly the same responses from client with roughly the same quality and time commitment as the original genius or model of excellence prior to beginning the challenging and rewarding activity of codification of the patterning demonstrated by the modeler
We further note that all modeling work products failing to meet these criteria are to be classified as some other logical type of model – we suggest Analytic Modeling as a general term for such work products; employing the patterning and the distinctions available in the technology of NLP applications but failing to respect the definition of NLP modeling.
It is also quite clear that there are applications (e.g. modeling a story teller) or contexts (e.g. the model is not available, deceased) in which the rather more extended and demanding commitment implied by NLP modeling may not be either applicable or the most efficacious or efficient strategy for explicating the patterning of a genius or extraordinary individual whose patterning is of interest. We intend this statement to be a recognition that there are other forms of modeling perfectly legitimate as strategies for learning which, nevertheless fail to meet the criteria that we are proposing defines NLP modeling.
The essential difference of consequence between the process of NLP modeling and Analytic modeling is the relative contributions of the model and modeler to the final work product. This difference resides principally in the degree of imposition of the perceptual and analytic categories of the modeler during the modeling process. – in the case of NLP modeling, the imposition is minimal; in the case of Analytic modeling, the imposition is maximal. These two extremes define a continuum of possibilities and it may well be that other practitioners of other forms of modeling may wish to propose further distinctions. We would welcome such refinements but at present will content ourselves with the one proposed here.
The requirements that the development of all cognitive representations be systematically suspended during the unconscious assimilation phase and the requirement that the modeler demonstrate the ability to perform as does the origin model or genius prior to beginning any cognitive coding describes the source of these profound differences.
The intention behind this description is to ensure that this distinction – arguable the most revolutionary contribution of NLP – is preserved and that by the systematic use of this distinction, the public may appreciate the differences between the two logical classes of models and the distinctive processes of modeling thereby implied: NLP modeling and Analytic modeling. We invite well-intentioned practitioners of NLP to join us in preserving the distinction herein proposed or to offer commentary about how such an essential distinction can be preserved in the field of Neuro-Linguistic Programming..
We further invite members of the NLP community who are considering participating in courses presenting modeling to request clarification of the type of modeling being presented. Such activity will ensure that the distinction is maintained in the field and that participants in courses will be able to determine whether the type of modeling is what they wish to master.
Carmen Bostic St. Clair | John Grinder |
Bonny Doon, California | October, 2005 |
作成 2023/11/7