以下の文章は、北岡泰典のメルマガ「旧編 新・これが本物の NLP だ!」第 18 号 (2004.7.19 刊) からの抜粋引用です。
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今回も、引き続き、先月末に開講された英国 NLP 学院認定大阪第一期および東京第二期プラクティショナー コースのモジュール 2 の講義内容に関連して、徒然的に考察してみたいと思います。以下の内容は同コース モジュールでカバーされたものです。
1. 真理はどのように真理たりえるのか?
普通、私たちは、「絶対的真理」というものがもしあるとしたら、その真理は万人が認めざるを得ないと思い込みがちですが、そういう絶対的真理でさえ「共同幻想」でしかない、と思わざるを得ない非常に興味深い主張をトランスパーソナル心理学者のケン ウィルバーがしています。
以下に、ウィルバーがその著「目には目を」で提唱した「妥当なデータ蓄積の 3 要素」に基づいた、私自身のバージョンの「あることが真理であることを確認する」手段としての 3 ステップ手順を記してみます。
1. 命令。これは、たとえば、「もしこれを行えば、それを獲得します」というような、(命令内容の妥当性を) 知っている者による指示です。
2.個別確認。命令に従った人が命令内容の妥当性を自分自身のために確認します。
3.共同確認。命令に従った一定数の人々が、命令内容の妥当性に関する自分自身の確認を相互共有し、この時点で、命令内容がこれらの人々が属するグループの中で真理として見なされるべきことになります。
上記の真理確立のための 3 ステップ手順は、科学的な真理の確認 (科学者は、同じ条件下で実行される反復実験で同僚が同じ結果を得ることに重く依存しています)、ユークリッド幾何学の公理、(「現代で最も偉大な 1 人のファッション デザイナー」ではないにしも) 「現代で最も偉大な複数のファッション デザイナー」の確定、政治的運動の盲目的な追従等を始めとして、ありとあらゆる領域においても機能しているように思われます。
このようにして「確立」された真理は、その妥当性を確認する人々のグループの中だけで妥当であることを強調しておく必要があります (これは「同語反復」です)。
ある特定の真理を確認するための上記の手順を考慮すると、現代の「科学の部門化」の時代に、1 つの体系内で専門家が発見した真理は、その体系の機能のし方を知らない部外者によっては容易に理解、受容されないかもしれない一方で、長期間充分に 1 つの体系内で研究する者は皆必然的にその体系内での普遍的結論 (すなわち、真理) に到達するはずである、ということが明らかになります。
人々が容易にお互いに意見を共にすることができない理由は、普遍的真理があまりにも難解であったり、理解するにはあまりにも捉え難いものであったりするからではなくて、むしろ人々は、部門化された各科学分野で確認できる「小さな」真理を「大きな」普遍的真理に統合するための手立てを (少なくとも現在のところ) もちあわせていないからです。
著者は、仮にさまざまな真理が論理タイプの理論に基づいて適切に整理されることが可能になれば、複数の小さな真理を普遍的真理の中に統合することは可能であると信じています。
2. どのように我々がアンフィニシュッド ビジネスから自由になれるか
私たちが望まず、変えたいと思う行動/思考パターンは、非常に多くの形容のされ方をされています。ゲシュタルト的に言うとこれらは「アンフィニシュッド ビジネス (未解決の問題)」でしょうし、NLP 的にはアンカーリングのプロセスによって自動化された、通常は無意識になった行動/思考パターンと定義されると言えます。他にも、コンピュータ用語では「プログラミング」という用語が相当するでしょうし、本メルマガの第 4 号で私が言及した「パックマン」も同じ意味を持っています。(以下に同号から該当部分を引用してみます。)
「テレビ ゲームの「パックマン」の比喩を借りると、NLP 以前の心理療法テクニックでは、パックマンが食べるべきキャラクターが無数に存在していて、 パックマンに食べられてもそれらのキャラクターが再度ぞろぞろと生き返ってくる (ロビンスの比喩で言う「やかんの蓋が自動的に再び閉まる」) ようなものだったのですが、NLP 個人編集テクニックの場合は、一度食べられたキャラクターが生き返ってくることはけっしてなく、キャラクターの数そのものが確実に着実に減っていくことを経験して文字通り驚愕を覚えました。数年間の個人編集 テクニックの実践の後は、それまで解消されることのなかった、複雑にもつれた大きな凧糸の結び目のようであったトラウマも最終的には完全克服されてしまいました。(なお、ここで言う「パックマンが食べるキャラクター」は、ゲシュタルト セラピーの「アンフィニッシュド ビジネス」と同義語です。)」
さらには、精神世界系の人々は、この「望まず、変えたいと思う行動/思考パターン」を「映画 (ムービー)」と形容する場合があるようです。
この点に関連して、私は、今回の大阪第一期および東京第二期プラクティショナー コースのモジュール 2 の講義で、以下のような「映画の見方と覚め方 6 段階手順」を発表しました。
1. 「映画」が存在すること自体がわからない段階。通常は、全く無意識的な状態と定義できます。
2. 「映画」が存在することはわかるようになったが、映画が終わったときに初めて映画があったとわかる段階。1. の状態から少し目覚め始めた状態と言えます。
3. 「映画」が存在することはわかっていて、映画が始まることもわかっていてもコントロールできず、また、映画の途中でも映画に気づいていながら映画を止めることができず、最後まで映画を見てしまう段階。「目覚めるための修行/訓練」を始めた状態です。
4. 「映画」が存在することはわかっていて、映画が始まることがわかっていてもコントロールできず、映画の途中でやっとどうにか映画を止めることができるようになった段階。「覚醒度」がかなり高くなっています。
5. 「映画」が存在することはわかっていて、映画が始まる直前に映画を止めることができる段階。その人の「望まず、変えたいと思う行動/思考パターン」の数がどんどん減り始めます。
6. 「映画」を意識的にいっさい存在させなくさせることができる段階。「望まず、変えたいと思う行動/思考パターン」が皆無で、いわゆる「無意識的有能」または「名人」の域に入った人です。
この「映画の見方と覚め方 6 段階手順」は、もちろん、NLP の個人編集テクニックを使って、自分の「望まず、変えたいと思う行動/思考パターン」をどんどん自分が「望んでいる行動/思考パターン」に変えていく過程に、文字通りそのまま当てはめることができます。
すなわち、たとえば、段階 1 で、自分の人生は自分が望まず、変えたいと思う行動/思考パターンだらけで 24 時間ずっと「蟻地獄」に陥って悪循環を繰り返していたとしたら、たとえ徐々にではあれ、上記の 6 手順を着実にフォローしながら 、NLP の個人編集テクニックを実践続けることを通じて、自分の今までは無意識的であった行動/思考パターン (すなわち、「映画」) を意識化させ、自分の思うように変容させることで、最終的には段階 6 の、24 時間 86,400 秒継続的に自分が望む行動/思考パターンだけを達成し続けるようになることが可能です。
3. メタモデル テクニックの理論的背景
NLP の「メタモデル」テクニックは、対人コミュニケーションにおける「傾聴テクニック」として知られていますが、この NLP の歴史上最初に開発されたテクニックに非常に深い意味合いがあることはあまり知られていないようです。
すなわち、たとえば、私が翻訳した NLP 古典書である「Magic of NLP」によれば、「指示指標」、「名詞化」、「非限定動詞」 (以上「情報収集」カテゴリー)、「叙法助動詞」、「普遍量化子」(以上「限界拡張」カテゴリー)、「読心術」、「因果関係」、「遂行者消失」(以上「意味変更」カテゴリー) の計 8 つのメタモデル応答パターンが紹介されています。(詳細は、同書を参照してください。また、メタモデル応答パターンのタイプの種類と数は、NLP トレーナーによって異なる場合があります。)
上記では、 8 つのメタモデル応答パターンが「情報収集」、「限界拡張」、「意味変更」の 3 つのカテゴリーに分けられていますが、これらのカテゴリーは、NLP 共同創始者のジョン グリンダーとリチャード バンドラーの言う「人間の 3 つの普遍的モデル構築原則」の「削除」、「一般化」、「歪曲」にそれぞれ対応しています。
さらに、グリンダーとバンドラーによれば、ある個人がこれら 3 つの普遍的モデル構築原則を使って自分自身の「内的地図」(これは、「深層構造 (DS、Deep Structure)」) とも呼ばれます) を作る際に使用される同じパターンを使って、その人は言語活動体系 (これは、「表層構造 (SS、Surface Structure)」) とも呼ばれます) を作り出しています。
このことは、ある人の深層構造と表層構造は山の均等な等高線のように互いに対応しあっているということを意味しています。さらに、1) その人の表層構造を考察すれば、その人の深層構造がわかり、2」 その人の表層構造を変えてあげれば、すなわち拡張してあげれば、その人の深層構造も、それに対応して変わる、すなわち拡張する、ということが意味されています。
以上のことは、以下の URL で参照できる「Magic of NLP」の挿入図 (「メタ・モデル図解 No.2」) が明確に表しています。
http://www.creativity.co.uk/creativity/magazine/library/mm.jpg
以上のように、NLP のメタモデル応答テクニックは、単に「会話上の聞き返しテクニック」ではなく、相手の世界についてのモデル (世界地図、深層構造) を変化、拡張することを支援するためのその人の言語活動体系 (表層構造) を変化、拡張させる繊細なテクニックであると言えることになります。
上のようなメタモデルの理論的背景を、大阪第一期および東京第二期プラクティショナー コースのモジュール 2 の講義でしたところ、「今まで何度もメタモデルの説明を受けてきていますが、このような説明を聞いたのは初めてです。目から鱗が落ちました」というフィードバックを受けました。
4. 私のプラクティショナー コースと他社コースの比較
私の現在のプラクティショナー コース参加者に、国内でマスター プラクティショナーの資格を取り、バンドラーのワークショップも受けた方が複数いらっしゃいますが、そのうちのお一人に私のプラクティショナー コースの講義内容についてのフィードバックを個人的に求めたところ、「(モジュール 1 の 2 日間とモジュール 2 の土曜日の、当初の計 3 日間の時点で) 本コースで学習した内容/テクニックで、今まで他の NLP 団体で学んだ内容と被っているものはほとんどありません」という感想をいただきました。
もちろん、今後私のコース内容と他社のコース内容がどれだけ被るのかを検証する必要性はあると思いますが、今まで、国内で「本物の NLP」を教えられるのは私しかいないという自負で国内での NLP ワークを始めてきている中で、このように客観的に他社のワークと私のワークを比較できる人から私の教え方のユニーク性が確認されたのは非常に心強いと思いました。
作成 2023/10/15