以下の文章は、北岡泰典のメルマガ「旧編 新・これが本物の NLP だ!」第 132 号 (2010.1.27 刊) からの抜粋引用です。

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今回は、「北岡新 NLP FAQ、その二十三」のトピックがカバーされています。


1) 北岡新 NLP FAQ、その二十三

Q55 (132): NLP は、いわゆる (統合失調症を含む) いわゆる「精神病患者」に対しても効果があるのでしょうか?

A55 (132): この質問は、実は、3 月から開講予定の私の「個人的天才になるための必要条件」ワークとも関係しています。

この点については、NLP 共同創始者のジョン グリンダー氏は、二、三年前の国内の「NLP コーチング」コースを開催したとき、コース参加者からの同じような質問に答えながら、「精神病患者に対しても NLP は、いわゆる正常人に対してとまったく同じように、何の違いもなく施すことができます。唯一の条件は、その際に、該当の患者さんと充分なラポールを事前に形成できていることだけです」とおっしゃっていました。

事実、NLP 共同創始者のリチャード バンドラー氏は、あるとき、全身カタレプシー (強硬症) の患者の脇に何時間 (たしか十何時間だったかと思います) も座ったまま、ただひたすらその人のかすかな微妙な呼吸をペーシングし続け、最終的にその人とのラポールを獲得して、その後「あなたの名前は?」と聞いたら、その人はカタレプシーの状態から抜け出す形で、自分の名前をつぶやいた、といったことが記録に残っています。

思うに、歴史的に見て、NLP は、狂人の頭の中で起こっていることの分析から出発して、同じ精神的メカニズムが正常人にも、天才にも適用できることを発見した実践的学問です。このことについては、私は、自分のワーク中で、よく、エレベータ恐怖症の人がどのエレベータに乗っても一定の「天才的反応」 (= パニック) を首尾一貫して示せるのは、イチローがアメリカのどの球場にいてもコンスタントに一定数のヒットを打てる天才性と同じです、と言ってきています。

すなわち、グリンダーとバンドラーは、シンドラー製であれ、オーティス製であれ、日立製であれ、三菱製であれ、東芝製であれ、さらには、国内であれ、中国であれ、サハラ砂漠であれ、アマゾンであれ、北極であれ、宇宙であれ、海底であれ、とにかく一定の形をした鉄製の箱に入ったとたん、間違いなく、首尾一貫性して、ある一定の非常に複雑な同じ行動パターン (すなわち、パニックのことですが) を何十年にもわたって寸分の狂いもなく瞬時に発揮し続けられているということは、野球でいう、どの球場に行っても年間一定数以上のヒットを打ち続けることができるイチローの天才性とまったく変わらない、ただ前者の行動パターンは非建設的、非生産的である一方で、後者は建設的、生産的である、と結論づけたわけです。

考えるに、私たちは、皆同じ現実に生きているということは、調理すべき、まったく同じ量と種類の材料を与えられていて、その前にいる調理人のようなものです。違いは、単に、私たち一人一人が使う「レセピー」にあるだけで、非常に不適切なレセピーを使えば、非常にまずい料理 (すなわち、狂人) ができあがり、平凡なレセピーからはまあまあの料理 (通常人) ができ、非凡なレセピーからは極上の味の料理 (天才) が生まれることは、理解に難くありません (この際の「レセピー」は、NLP では、プログラミング、アンカーリングに相当しています)。

ちなみに、このようなことが発見され、実際の生活へのそれらの発見の落とし込みを可能にしたのは、そもそも、NLP が「マインド ワーク」ではなく、マインドを超えた「メタ マインド ワーク」であるからこそでした。

各業界における各天才に関して、この「天才になるためのレセピー」を探るのが私の「個人的天才になるための必要条件」ワークショップ シリーズの目的になっています。

なお、3 月 22 日開催の「個人的天才になるための必要条件」一日ワークショップでは、私自身が、どのようにして 1) 英語を含む語学学習、2) NLP、3) 精神世界、4) 片手でのコンピュータの小キーボード操作の領域で、自分自身を「個人的天才」 (ベートーベンやアインシュタインやピカソのような「普遍的天才」という意味ではなく、個々人自身の専門領域で自分自身の潜在性を開花させ、充全なパフォーマンス能力を発揮できている「自分が活動している業界での第一人者」という意味ですが) にしたかの観点から、「個人的天才になるためのレセピー」の分析と、私自身の「片手でのコンピュータの小キーボード操作」 (英語の直接打ち) の能力に関しての実演が行われる予定です。

その後、もし仮にこのワークショップがシリーズ化されるとしたら、毎回二日間ワークショップが開かれるものとし、初日には 3 月 22 日のワークショップと同じように、「北岡式個人的天才になるためのレセピー」一日ワークが紹介され、二日目は、私と、今回私のトレーナーズ トレーニング コースを卒業したトレーナー 13 名のうちの一人との共同開催とし、その該当トレーナーが興味をもっているエリア (スポーツ、芸能、政治、ビジネス等) でのある特定の「個人的天才」を共同でモデリングしていくことを予定しています。この「共同モデリング」は、たとえば、その天才の方のパフォーマンスを写した映像を会場で流し、私と該当のトレーナーがそのピーク パフォーマンスを意識的および無意識的モデリングすることになります。

以上が、今後開催予定の「個人的天才になるための必要条件」ワークショップ シリーズの (予定) 概要ですが、今週末開催の「Meta Mind Work I」についても、関連情報をお伝えしておきます。

すなわち、たとえば、私がワークで「アンカーリング」テクニックを紹介するとき、初めて自分自身のこのような自動性もしくは条件反射性を知って驚愕する人が多いですが、中には、「アンカーリングは、意識化することで、その影響下から抜け出せることはできるのですか?」といった質問をされる方もいます。これに対しては、私は、「それは絶対無理です。もしそんなことが可能であれば、左脳的洞察だけで、人々はすべて即問題的行動から解放されて、健康になるでしょうが、現実的には、そのようなことはありえていないです」と答えさせていただいています。すなわち、アンカーリングのようなプロセスは無意識的な機能なので、その存在を意識的に認識するだけで、解消、克服することはまず不可能です。ここに、私の「Meta Mind Work」を含む、最近の無意識的ワークの「存在理由」があります。

また、ミルトン H エリクソンは「クライアントがセラピストに来る唯一の理由は『その意識が無意識とラポールが取れていない』からです」と言ったとされていますが、私の無意識ワークでは、まさにそのラポールの取り方が教えられます。

さらに、拙著『一瞬で新しい自分になる30の方法』の本に関しては、「ただし、さらにNLPをちゃんと学びたいと思われた場合は、有能なNLPトレーナーのもとで実際に学ばれることを強く推奨します。NLPは座学でなく、あくまでも『実践的』なコミュニケーション心理学だからです」というふうな複数回の警告にもかかわらず、読者で、この本を座学として学び、自分自身の理解が正しいと思い込んでいる人々も少なからずいるようです。

これは、私にとっては、「左脳的意識的学習」であり、フランス語やドイツ語を学ぶときに、その文法書にある咽頭部の断面図を見て舌等の位置を座学的に確認することで、日本語にはない音を発音しようと「独学」で試みるのと同じくらい危険であり、ばかげていると思えます。

実質的に、そのような座学で習得した発音は、ほぼ100% の確率で、母国人の発音とはまったくかけ離れているはずです。真の右脳的無意識的学習は、実際に該当の技能を身につけている人の実際のワークに触れた上で、その人が実際に行っていることを全身全霊で「モデリング」することによってしか、ありえないと思います。

このこと (= 座学的学習) を避けるためにも、最近私は、自分のワークの中で、「この本 (『一瞬で新しい自分になる30の方法』) は、(まず私のワークを受けていただいた後に読まれるのであれば、非常に有益でしょうが、実際の右脳的学習なしに、左脳的学習に終始する読者にとっては) 『駄作』です」という警告を与え始めています。

このような「左脳 (意識) 中心」の学習から「右脳 (無意識) に身を任せた」学習への移行を促進することも、私の無意識ワークの根幹部を占めています。

私のこのような無意識ワークに興味のある場合は、今週末から開始される「Meta Mind Work」ワークショップ シリーズへの参加をお勧めいたします。

http://www.kitaokataiten.com/mindwork/ (紹介サイト)

Q56 (132): NLP は、どの程度勉強すれば、教え始めてもいいのでしょうか?

A56 (132): 私は、NLP の資格は、本来的に、該当の NLP ピアの実力と経験を「バックアップ」するためのものであると思っていますので、理論的には、いかなる上級の資格をもっていなくても NLP を教えてもいいと考えていますが、通常は、マスター プラクティショナーの資格以上が必要になるかと思います。(ただ、国内外を問わず、マスター プラクティショナーもしくはトレーナーの資格をもっていても、NLP を使いこなすことができていない NLP ピアが多くいるようです (このような人々に対する「ブラッシュアップ」ワークショップを、私自身今企画中ですが)。)

一方で、数回 (場合によっては、一回) だけのセッションを受けただけで、NLP もしくは催眠セッションを自ら施そうとするという、非常に危険なことをしようとする人々もいるようです。

NLP や催眠は、一度受けたら、「ごく簡単なこと」であることがわかるかもしれませんが、しかし、人間のマインドを扱う以上、数回のセッションを経験しただけの人には対処できない (すなわち、経験が浅いので、参照機構がない) 事象がたくさん存在するのもまた事実です。

どれだけ安易なものであると思えても、催眠もしくは変性意識に関するありとあらゆる事象を知っておかなければ、セッション中にクライアントにもし何かが起こった場合、どうしても対処できないことがありえるはずです。

私自身、「leave no stones unturned (すべての石の裏をチェックする、すなわち、あらゆる手段を尽くす)」の段階まで自分自身を知ろうとして、そのレベルに達しないかぎり他の人に NLP 等を施すべきではない、という不退転の決意をもって、1988 年から 1995 年まで、英国で、徹底的な NLP 演習の自己適用を行いましたし、さらに、本格的に NLP ファシリテータとして活動し始めたのは、1995 年のドイツでのバンドラーによるトレーナー認定を受けた 6 年後の 2001 年でした。その意味で、その後、2002 年に帰国して以来、国内の市場では、 NLP が本来からは極度に希釈された「小手先」の形で、もっともっと安易なレベルで、安易な人々によって、教えられてきていることを知って、極めて驚き、かつ、憂えてきている次第です。

作成 2024/2/6