以下の文章は、北岡泰典のメルマガ「旧編 新・これが本物の NLP だ!」第 107 号 (2009.6.1 刊) からの抜粋引用です。
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今回は、「NLP は状態と文脈の出会いである」、「催眠 (=変性意識) の定義」のトピックがカバーされています。
1) 「NLP は状態と文脈の出会いである」
5 月のゴールデン ウィーク中に NLP 共同創始者のジョン グリンダー氏が来日されていましたが、来日中の同氏から突然「(2 年前の離日時にあなたに預けた) 金魚はどうなりましたか?」という 1 行だけの非常にシュールな電子メールをいただき、「その件については、私は金魚を他の人に預けたので、情報をもっていません」と返信したところ、来日している旨を伝えられ、旧交を温めるために、同氏から宿泊ホテルで会うように招待されました。
そういうことで、グリンダー氏と同氏のスイートルームでお会いしました。
相変わらずとてもお元気そうでしたが、この会話の中で一点、非常に私の心に残った同氏の言質があります。それは、
「NLP は状態と文脈の出会いである (NLP is a clash between a state and a context)」
というものです。
これは、非常に深遠な言質で、グリンダー氏からこの言質をお聞きしてからずっと、その意味合いについて考えてきていますが、以下のことが結論づけられるかと思います。
1) この言質は明らかに「文脈 vs 内容」の観点を念頭に置いていますが、もしかしたら、「現実的実体」として対処すべきなのは「状態」と「文脈」だけで、ある状態をもった人がある特定の文脈に入ることで、瞬間から瞬間にかけて「仮想現実」としての「内容」が現れるように見えているだけにすぎない。
2) 人間が経験する「問題」は、相対的な 「仮想現実としての内容」にすぎないので、 NLP 的命題である「リフレーミングできない問題は存在しない」の妥当性が裏打ちされる。
極めて重要な金言だと思います。
2) 催眠 (=変性意識) の定義
私は、「催眠」の最短定義として「催眠≠今ここ」 (「『今ここ』以外はすべて催眠状態である」) を提唱してきています。また、本メルマガの第 9 号その他で類似の言及をしてきていますが、本紙上で、改めて、「催眠 (=変性意識)」についての定義を提唱してみたいと思いました。
まず、「今ここ」は、NLP の「4Te」および「カリブレーション状態」と同義です。これは、外界から五感の知覚経路を通して情報が「生」の状態でマインドに入ってくる状態です。通俗的に言うと、自分の思い込みがいっさい排除された状態です。
「今ここ」とは対比的に、私の世界地図の中では、「催眠」の同義語は非常に多くあります。たとえば、
1. 「変性意識」
2. 催眠で言う「トランス」
3. NLP で言う「4Ti」
4. NLP で言う「アンカーリング」
5. コンピュータの「プログラミング」
6. 古代インド「ヴェーダンタ」哲学で言う「サムスカーラ」
7. 一般用語の「条件付け」
8. パブロフの「条件反射」
9. フロイトの「自由連想」
10. ユングの「アーキタイプ (元型)」、「コンプレックス」、「集合的無意識」
11. 『ミルトン H エリクソン全集』 の編者のアーネスト L ロシが提唱する「SDMLB (State-Depending Memory, Learning and Behaviour)」 (「状態依存の記憶/学習/行動」)
12. トランスパーソナル心理学者のチャールズ タートの言う「d-SoC (Discrete State of Consciousness)」 (「個別の意識状態」) および「d-ASC (Discrete Altered State of Consciousness)」 (「個別の変性意識状態」)
13. 同じくトランスパーソナル心理学者のスタニスラフ グロフの提唱する「COEX システム (Systems of Condenced Experience)」 (「凝縮経験システム」)
14. ゲシュタルト療法で言う「アンフィニシュド ビジネス (未解決の問題)」
15 家族療法医ヴァージニア サティアの言う「パーツ」
16. スポーツ心理学で言う「ゾーン」
17. ミハイ・チクセントミハイの言う「フロー」
18. グリンダー著の『個人的天才になるための必要条件』で言うデーモン (コンピュータ Unix で「ある条件が満たされると明示的に呼ばれなくとも自動的に動き出すプログラム」を意味する用語)
19.「精神的外傷 (トラウマ)」、「PTSD (心的外傷後ストレス障害)」、「フラッシュバック」
20.仏作家マルセル プルーストの言う「特権的瞬間」
等があります。(まだ、他にもある可能性があります。) これら数多くの個別の分野で、人間の脳メカニズムについてのほぼ同じプロセスがこれほど多くの別々の名前で提唱されてきていることは驚愕すべきことだと思います。
これらの用語で、これらの基盤をなしている同じ意味 (または、少なくとも似た意味) を最も典型的に表しているのはロシが提唱した SDMLB であるように思えます。
これらはすべて、「青空」 (本当の自分) を覆っている不純物としての「白い雲」ですが、幸いなことに、これらの白い雲を扱うまさにその行為で、白い雲をどんどん取り除いていって、最終的に真の自分を発見するという非常に逆説的なことが NLP を通じて達成可能になっています。(私には、NLP 以外の方法では、この逆説的なことは達成不可能のように思えます。)
なお、この SDMLB に関連した NLP テクニックの「共感覚の分離」が、6 月 22 日開講の北岡の「スピリチュアル NLP」ワークショップ第八回ワーク 『汝自身を知れ: SDMLB (状態依存の記憶、学習、行動』で紹介されます。詳細は、以下のページにあります。