以下の文章は、北岡泰典のメルマガ「新編 新・これが本物の NLP だ!」第 5 号 (2013.5.27 刊) からの抜粋引用です。

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現在、本メルマガは「新フェーズ」に入っていて、新編では、これまで哲学的命題に対する NLP 考察をしてきていますが、視点を変えて、「北岡比較文化考、その二」を発信してみたいと思います。

北岡は、1981 年から 2001 年まで海外に滞在して、英国には通算 16 年間いましたが、その間、日本にいたら、絶対見えないような海外および国内の文化的側面を数多く目にしてきました。

これらの経験は、場合によっては、日本人の方々にも役立つこともあると思っていますので、「北岡比較文化考」というシリーズ名で、「比較文化人類学」および「異文化コミュニケーション」の観点から、さまざまなトピックについて不定期的に語ってみようと思った次第です。

今回は、以下のトピックがカバーされています。

1.北岡比較文化考、その二/英語学習について

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1.北岡比較文化考、その二/英語学習について

北岡自身、自分のボックス (既成概念) から出る最適の方法は、外国語の学習ではないか、と思ってきています。

これは、通常、人間の思考パターンは母国語に「完全制約」されていますが、どの人間でも生まれた国もしくは場所が違えば幼児期にどの言語を完全習得することもできるという事実から見ても、数多くある言語から、たまたま日本に生まれて、たまたま日本語を学習してきているだけなので、他の言語を完全習得するということは、「自分のボックス/アイデンティティを相対化する」ための非常に有効な方法となっています。

どういうわけか、日本では、「島国」のせいか、「外国人と話す機会がない」ということ等を理由にして、他のボックス/アイデンティティを試すことなしに、「日本人、日本文化、日本語が最高である」と思い込む傾向があるようですが、たとえば、歴史的、政治的な動向次第では、どの国の覇権下になっていた可能性もあるヨーロッパ等の国々では、自分が今もっている言語、文化的アイデンティティはかなり相対的なものであるという自意識がどこかにあるように思われます。

非常に興味深いことは、実は、NLP を学習することは、新たな外国語を完全習得することと似たことなのですが (意味合いは、今までの無意識的な思考回路を意識化して、かつ、新たな思考回路を開いた上で、その思考回路が「第二の天性」になって自然な天才性を発揮するまで新行動パターンを継続的に練習し続けなければならない、という点は、語学学習も NLP 学習もまったく同じ、ということです)、国内で、NLP 学習を途中で放棄してしまう方々が多いらしいことと外国語ができないことには、かなりの共通点があるようにも思えます。

本メルマガの初期の号で書いたと記憶しているのですが、私自身、学校時代に英語と数学の (計算問題ではなく) 応用問題が好きだったことと、その後の人生で NLP にはまり始めたことには共通点があります。すなわち、公式 (英語の構文、数学の公式、NLP の演習) を学んだ後、娑婆 (社会生活) に戻った後、実際の問題にどの公式を使うべきかに頭を使うことが楽しくてたまらなく感じてきている次第です (単純な計算問題や、わかりきった、人から教えられた答え等には、私は、興味をもてずにきています)。

ちなみに、私は、現在、英語市場向けに LinkedIn という SNS を利用しようとしているのですが、LinkedIn のある日本語の解説書に非常に興味深いことが書かれていました。

アメリカ留学の経験のあるこの著者によれば、現地に長年滞在していても英語が喋れない日本人留学生がいる一方で、渡米直後はほとんど話せないのに、半年、1 年でかなり会話力が伸びる学生がいたということです。著者は、その違いは、TOEFL 等の英語テストで一定の得点をクリアしているかどうかであることを発見しました。留学してどんどん英語が話せるようになるのは、「ペーパーテストの成績はいいが喋れない」学生ばかりだった、ということです。

本メルマガの読者が、この著者の発見に驚かれるかどうかはわかりませんが、このことは、私の過去の語学学習のし方と首尾一貫しています。

すなわち、私自身、TOEFL テストを受けたことはないですが、高校大学で、英語の構文分析に力を注いで、左脳的な英語学習力を高め、(日本にいたときにまったく喋れなかったというわけではないですが) 欧米に滞在したとき、自分の会話力の上達には、自分でも驚いた次第でした (この学習法は、仏語学習の場合も、多かれ少なかれ同じでした)。

この意味で、私は、ある人に、「日本の学校教育での英語学習法はすばらしいと思う」と言ったら、その人から、「北岡さんが、普段、戦後の英語教育法が間違ってきている、と言っていることと矛盾しますね」と指摘されました。

私は、「いや、矛盾はないです。戦後教育の高校大学での『徹底的構文分析』ほど英語の力をつける場はなく、そういう左脳的な英語学習を毛嫌いし、右脳的な会話重視の方法論こそ唯一の学習法だと信じている大多数の国民を作った戦後の英語教育法こそが間違っているのです」と答えさせていただきました。

この点に関して興味深いのは、「左脳的な英語学習を毛嫌いし、右脳的な会話重視の方法論こそ唯一の学習法だと信じている」人々は、たぶん「徹底的構文分析」を行うだけの忍耐力とコミットメントがなく、おそらくこのような左脳的学習に「途中挫折」した人々だと思える点です。

なぜならば、私の『5 文型とNLPで英語はどんどん上達する!』で紹介されている忍耐のいる方法論は、Amazon の書評等では酷評されているようですが、 逆に、最近、かなり英語ができる方から「この本の中にある方法論は、英語が伸びている人にとっては当たり前のことしか言っていない」と指摘されたからです。

いずれにしても、このような「努力の要らない」右脳的学習法に基づいて、(間違った形で) 英語学習しようとする日本人の態度と、右脳的な経験だけに頼ろうとする NLP 学習者の間にも、明白な共通点が見出されます。

以上の文章を書こうと思っていたとき、最近の私のワーク参加者の方から、以下のメールをいただきました。

「先生は英語に関わる日本人のメンタルブロックに『対人恐怖症』があること、特に欧米人に対しては強く働くことをご存知でしょうか?私自身これを知って驚愕したのですが、確かに私も外国人に対して恐怖の感情が出てくるのです。怖がっていては言葉など出ませんよね。ですから5文型の前にこのメンタルブロックを外すのが肝要かと思われます。(勿論そんなことは先生はNLPワークでおやりになるに違いないのですが。)」

私自身非常に的を得ているかもしれないと思うこのメッセージに対しては、「拙著『5 文型とNLPで英語はどんどん上達する!』の中で、私なりに NLP 演習を紹介しながら、問題解決法を提示しているつもりでいます」と答えさせていただきました。

作成 2022/11/5